暗闇の中。
村上紀文は柳田茜を見つめていた。
柳田茜は慌てて説明した。「わざとここで待っていたわけじゃないの。友達とカラオケに来ていて、今終わったところで、たまたまあなたを見かけただけ」
村上紀文は彼女の嘘を指摘しなかった。
だって、もう仕事は終わっているのに、カラオケが今終わったはずがない。
「夜食でも食べない?」と彼は言った。
柳田茜は有頂天になった。
冷静を装おうとしたが、それでも心臓は激しく鼓動していた。「ちょうどお腹が空いていたの」と彼女は言った。
「何か美味しいものある?」と村上紀文は尋ねた。「おすすめを教えてくれない?」
「あるわ。すぐ近くに24時間営業の黒糖タンユエンのお店があって、私すごく好きなの。あなたも気に入るかしら?」
「食べてみれば分かるさ」