夜は更けていた。
ナイトクラブは相変わらず賑わっていた。
柳田茜は自ら村上紀文に話しかけ、顔を赤らめていた。
当時の村上紀文は誰もが冷たくて近寄りがたい人だと思っていたが、彼女だけは彼の心が実は温かいことを知っていた。
斎藤咲子と鈴木隼人が個室から出てきた時、柳田茜が村上紀文と積極的に話している様子が目に入った。一目見ただけで、柳田茜の村上紀文への思いが並々ならぬものだと分かった。
彼女の瞳が一瞬引き締まった。
鈴木隼人もそれを見て、笑いながら言った。「柳田茜がどこにいるのかと思ったら、ここで村上紀文と昔話をしていたんだね。」
柳田茜の頬はさらに赤くなった。
同級生のほとんどが同年代で、柳田茜も29歳になろうとしていた。
もうすぐ30歳になる女性が、このような恥じらいを持ち続けているのは珍しかった。