北村忠は階段から降りてくる村上紀文を見つめ、ちょうど外から入ってきた冬木郷にも目をやった。
彼の口元に邪悪な笑みが浮かんだ。
彼は視線を斎藤咲子に移した。明らかに咲子も二人を見ていた。
こんな配置が北村忠の故意だということは想像に難くなかった。
彼女はただ少し驚いていた。村上紀文がどうして北村忠と連絡を取るようになったのか。
彼女の村上紀文に対する理解では、彼はこういう人たちに自ら連絡を取るタイプではない。もちろん、村上紀文が実は野心や復讐心を持っている可能性も排除できない。
彼も言ったではないか?
ある経験を経た後は、自尊心はそれほど重要ではなくなると。
彼女はそんなことを淡々と考えながら、全体的に冷静さを保っていた。
北村忠は眉をひそめた。
この斎藤咲子の精神力は本当に強い、こんな状況でも動じないなんて。