番外022 村上紀文の誕生日（一更）

村上紀文は一晩中メッセージを待っていた。

午前2時になってようやく斎藤咲子からの返信が届いた。「帰らない」

村上紀文はそのメッセージに「わかった」と返した。

斎藤咲子は画面上のメッセージを見つめていた。

時差があるため、彼女にとってはまだそれほど遅い時間ではなかったが、東京ではすでにかなり遅い時間のはずだった。

こんな遅くに、村上紀文はまだ寝ていないの？

それとも、実は彼女の返信を待っていたのだろうか。

彼女は黙って携帯を見つめていた。

鈴木隼人は目の前の斎藤咲子を見ていた。

二人は商談を終え、今は一緒に夕食を食べていた。

彼女が突然携帯を見つめて呆然としているのを見て、少し驚いて「何かあったの？」と尋ねた。

「何でもないわ」斎藤咲子は携帯を置き、ナイフとフォークを使いながらステーキを食べながら無関心そうに言った。「明日帰れる？」

「今日はもう基本的に計画を決めたから、明日は契約書にサインするだけ。もし急いで帰りたいなら、少し遅い便で帰れるはずだよ」

「じゃあ早めに予約して」

「明日帰るの？」鈴木隼人は確認した。

「うん」

「わかった」鈴木隼人はうなずいた。

斎藤咲子は携帯を手に取り村上紀文にメッセージを送ろうとしたが、考え直して置いた。

計画通りにいかないこともあるかもしれない。

……

翌日。

村上紀文は朝早く渡辺菖蒲に電話をかけ、帰ると伝えた。

午後2時過ぎ、彼は家に戻った。

帰る前に渡辺菖蒲へたくさんのお土産を買った。

毎回帰るたびにたくさん持ち帰り、いつも渡辺菖蒲を喜ばせていた。

渡辺菖蒲は親しげに村上紀文の腕を引いて「今夜はママと一緒に食事しましょう」と言った。

「いいよ」

「外で食べましょう。あなたの誕生日をお祝いするの」渡辺菖蒲が計画した。

「何が食べたい？」

「グランメゾンのステーキよ。本当に長い間食べていないわ」渡辺菖蒲は言いながら少し口の中が水っぽくなった。

「先に予約するよ」

「席をいくつか多めに予約して。私の友達何人かを呼んであなたの誕生日をお祝いするわ」渡辺菖蒲が突然言った。

村上紀文は母親を見た。

「あそこは少し高いのは知ってるけど、でも年に一度か二度しか食べられないし、今日はあなたの誕生日だから、たまには贅沢してもいいでしょう」渡辺菖蒲はすぐに言った。