番外042 斎藤咲子以外の女性を好きになることはない（一更）

病院の病室にて。

渡辺菖蒲は村上紀文を睨みつけていた。

彼女は冷たく言った。「紀文、この世界にはこんなにたくさんの女性がいるのに、どうしてそんなに下賤なことをして斎藤咲子を好きになるの？どうしてもあの女を好きにならなければならないの！誰でもいいのに、どうしても咲子なの！私はあなたの後ろにいるあの柳田茜でさえ、咲子よりも百倍もましだと思うわ！」

柳田茜はその時ドアの前に立っていて、突然渡辺菖蒲に名前を呼ばれ、緊張した様子だった。

村上紀文は冷淡に言った。「僕はもう君と僕と咲子のことについて話したくない。医者によると、これから手術があるから、体力を温存して休養するのが一番だよ」

「私が何を言っても無駄なの？」

「そうだ」村上紀文は断言した。

「出て行きなさい！」渡辺菖蒲は叫んだ。

村上紀文は渡辺菖蒲を一瞥し、振り返って出て行った。

渡辺菖蒲は息子の背中を見つめ、怒りで人を殺したい気分だった。

彼女は絶対に村上紀文と斎藤咲子がこのまま一緒になることを許さない、絶対に！

村上紀文は病室を出た。

柳田茜は急いで彼の後を追い、「紀文」と呼びかけた。

村上紀文は一瞬立ち止まった。

「このまま行ってしまうの？お母さんはどうするの？」柳田茜は尋ねた。

「彼女は自分で自分の面倒を見られる」村上紀文は動じなかった。

「でも、癌なのよ...」柳田茜は少し我慢できないように言った。

彼女は幼い頃から両親に大切に守られ、両親に依存していた。この世界で最も近い人は自分の両親だと思っていたので、どうして母親を一人で病院に放っておけるのだろうか？

確かに渡辺菖蒲は付き合いにくい人だが、本当に見捨てていいのだろうか？

村上紀文は足を止めた。

彼は言った。「スーパーに行って日用品を買ってくる」

柳田茜は口元に笑みを浮かべた。

彼女は村上紀文が母親を放っておかないことを知っていた。彼は普段冷淡に見えても、孝行な人だった。

村上紀文は病院の隣のスーパーで買い物をした。

柳田茜はずっと村上紀文の側にいて、日用品を選ぶのを手伝っていた。特に女性用品などを。

二人は大きな袋を二つ買って、病室へ向かった。

病室では、渡辺菖蒲も恐らく怒り疲れ、手術後で弱っていたこともあり、眠っていた。

村上紀文は購入した物を取り出して病室に置いた。

柳田茜も彼を手伝った。