夜の色、かなり遅くなっていた。
村上紀文はなかなか眠れなかった。
実は元々少し不眠症だったが、今夜の不眠は普段とはどうも大きく異なるようだった。
彼はずっと喉が渇き、心の中には言い表せない火のようなものが燃えていた。
彼はベッドの上で寝返りを打ち続けた。
最終的にどうしても気分が優れず、彼は布団をめくって起き上がり、リビングに行って冷たい水を飲んで喉の渇きを癒そうとした。
寝室のドアを開ける。
今はもうかなり遅い時間だ。
家の中も静まり返っていた。
村上紀文はキッチンに向かい、冷たい白湯を一杯注いだ。彼は素早く一杯飲み干し、少し心が落ち着いたように感じた。
しかしその安らぎは一時的なもので、飲み終わるとまた耐え難い渇きを感じた。
仕方なくさらに二杯飲んだが、飲み終わっても同じ感覚が続き、心の不快感は軽減されるどころか、むしろ胃に不快感を覚えるようになった。
彼はグラスを置いて部屋に戻り、再び眠ろうとした。
ちょうど振り返ったとき。
突然、誰かと正面からぶつかってしまった。
「あっ」柳田茜が小さく叫んだ。
その声に村上紀文の胸がどきりとした。
柳田茜は急いで彼の腕から身を離し、少し驚いた様子で言った。「村上紀文?」
「うん」村上紀文は低い声で返事をした。
「あなたも水を飲みに来たの?」
「うん」
「もう飲んだ?私が水を注ごうか?」柳田茜が彼に尋ねた。
「もう飲んだよ」
「そう」柳田茜はうなずいた。
村上紀文は柳田茜の傍を通り過ぎようとした。
柳田茜は突然彼を引き止めた。
村上紀文はぎくりとした。
その瞬間、本能的に彼女を押しのけようとしたが、体は動かなかった。
柳田茜は言った。「なぜか今夜は眠れなくて、でもおばさまの眠りを妨げたくなくて、だから出てきたの。少し話し相手になってくれない?」
村上紀文の喉が動いた。
柳田茜は緊張した様子で彼を見つめていた。
実は彼女はずっとリビングで村上紀文を待っていたのだ。
約2時間待ち、村上紀文が出てくるかどうかもわからなかったが、彼が突然ドアを開け、明らかに足早に歩いてくるのを見た。彼女は彼の後ろにいたが、彼はまったく気づかなかった。今、彼女が彼の前に立っていると、彼の熱い息遣いさえ感じることができた。
村上紀文は言った。「少し眠いんだ」