村上紀文は斎藤咲子の携帯電話を持って、そのまま斎藤咲子の家から飛び出した。
彼は携帯電話に向かって言った、「慌てないで、まず救急車を呼んで、すぐに戻るから。」
「わかった、わかった、待ってるわ。」柳田茜の泣き声がはっきりと聞こえた。
村上紀文は素早く自分の車に戻り、アクセルを踏み込んで、猛スピードで走り去った。
彼は家に急いだ。
その時、救急車も到着した。
渡辺菖蒲は移動用のストレッチャーに乗せられ、救急車に運び込まれた。
村上紀文は車を停め、救急車に同乗した。
柳田茜は傍らで泣きすぎて目が腫れていた。
彼女は言った、「今朝起きて、おばさまをトイレに連れて行こうとしたら、突然吐き始めたの。昨晩食べたものを全部吐いて、最後には血を吐いて、おばさまは意識を失ってしまって、どうしていいかわからなくなったの。」
村上紀文はうなずき、慰めた、「落ち着いて。」
柳田茜は何とか冷静さを取り戻した。
救急車は病院に到着し、すぐに救急処置室へ運ばれた。
村上紀文と柳田茜の二人は救急処置室で待った。
二人とも落ち着かない様子だった。
長い時間が経ち、医師がようやく救急処置室から出てきた。村上紀文はすぐに駆け寄り、「どうですか?」
「命は取り留めましたが、状況はかなり厳しいです。」医師はため息をつきながら言った、「お母さんの状態は薬物拒絶反応が出ています。薬に耐性ができると、生きられる日数はどんどん短くなります。まずは入院して状態を安定させ、病状が少し落ち着いたら退院することをお勧めします。」
「わかりました。」村上紀文は急いでうなずいた。
「この期間はお母さんとできるだけ一緒に過ごしてください。今の状態ではいつ何が起きても…」
「はい。」村上紀文はうなずいた。
医師は無力感を抱えながら立ち去った。
渡辺菖蒲が運び出された。
顔色は真っ青だった。
その瞬間、まるで息をしていないかのように見えた。
柳田茜は興奮して駆け寄った、「おばさま、おばさま、大丈夫ですか?」
渡辺菖蒲は指を少し動かし、口を開いたが言葉は出なかった。
「おばさま…」
「患者さんは今とても弱っています。まず休ませてあげて、邪魔しないでください。」看護師はすぐに言った。
柳田茜は感情を抑えた。
村上紀文と柳田茜は看護師と一緒に、渡辺菖蒲を病室に運んだ。