さようなら

車がコーヒーショップの前で急停車した。エースがドアを開ける前に、私は先にドアを押し開けて車から出た。振り返ることなく、私はコーヒーショップのドアに向かって真っ直ぐ歩き、エースが後に続いた。店の入り口に近づいた時、ドアが自然に開いた。制服を着た従業員が出てきて、太字の大文字で「閉店中。年次棚卸し実施中」という看板をドアに掲げた。

私は突然立ち止まり、後ろのエースも同様だった。

「お気に入りのカプチーノが飲みたい気分なのに、なぜ今閉まるの？これじゃあエースと一緒に新しいコーヒーショップを探さなきゃいけないじゃない」と私は心の中で思った。早めの閉店に落胆して、私は眉をひそめてエースの方を向いた。

「離婚について話し合う場所を他に探さないといけないわね」

彼は返事をせず、ただ頷いただけだった。

私は彼の傍を通り過ぎ、できるだけ距離を置こうとした。でも彼は素早かった。すぐに私の横を歩き、私たちの腕が触れ合った。彼の手が私の肌に触れた時、私は身震いした。それは私の胸の中で心臓が跳ねるような感覚を引き起こした。私は足を速め、彼を後ろに置き去りにした。車に着くと、彼の手助けを待つことなく中に乗り込んだ。

エースは運転席に戻りエンジンをかけた。高速道路を運転しながら、しばらくの間沈黙が続いた。私は再び窓の外に目を向けた。

「もうすぐ雨が降るわね」と私は空を見上げながら思った。澄んだ空の最後の痕跡は消え、怒りを帯びた灰色の雲がその支配権を握っていた。

車が高速道路をスムーズに走っている時、エースが話すのが聞こえた。私は彼の方を向いた。「もう一度言って？」

「カフェ・グランデに向かっていると言ったんだ」と彼は繰り返し、目は道路に釘付けのままだった。

「ダメ」と私の心の一部が即座に彼の言葉を拒否し、手を握りしめた。カフェ・グランデには私とエースの数え切れないほどの素晴らしい思い出がある。私たちの初デートをしたコーヒーショップだった。また、私が最高の「はい」を彼に告げた場所でもあった。カフェ・グランデは私たちの恋物語が始まった場所。私は私たちの結婚がそこで終わってほしくなかった。

しかし、断ろうとした時、私は立ち止まって考えた。おそらくこれが最善なのだろう。私たちの恋物語を、それが始まった場所で終わらせることで、お互いにすっきりと区切りをつけることができる。