午後6時近くになり、沈みゆく太陽は輝きを失いつつありましたが、まだ空高く明るく輝いており、優雅なクロフォード邸の2階にあるテラスの床から天井までのガラス窓から見える、壮大な夕暮れの影を作り出していました。
以前、邸宅を不気味に包んでいた静寂は、盛大な舞踏会の計画に興奮した声々に取って代わられていました。キングの優雅な玉座のような一人掛けソファには、アレクサンダー・クロフォードが柔らかいクッションに寄りかかり、手に書類を持ちながら、周りの騒ぎを無視して座っていました。
その隣には、女王のために作られたかのような同じく優雅な一人掛けソファに、クラリッサ・クロフォードが座っていました。彼女の漆黒の髪には数本の銀色の筋が入り、エレガントなシニヨンに結われていました。その年齢でもなお持ち合わせている生来の優雅さと気品を纏い、王族のように背筋を伸ばしてソファに座っていました。彼女は間違いなく女王でした。