救世主

彼の体は意外なほど柔らかく、温かかった。彼の肌の燃えるような温もりが私の肌に触れた時の、くすぐったい感覚を味わいながら、私は目を閉じた。初めて、私が着ているシルクのネグリジェの薄さを意識し、その考えに頬が赤く染まった。でも、暗いから彼には私の服装なんて分からないはず、と自分に言い聞かせた。彼は驚くほど楽々と、まるで羽のように軽いかのように私を抱えて家の中に入った。玄関まで、ほとんど音を立てずに到着した。大柄で筋肉質な体格の男性なのに、まるで猫のように軽やかに動けるのだ。

「いい加減、首に腕を回してくれ。階段から転げ落ちたくないだろう」彼は苛立たしげに言った。私の思考は風に吹き飛ばされたかのように消え去った。下唇を噛みながら、言われた通りにした。この面倒な状況は全て私のせいだと分かっているけど、そんなに明らかに不機嫌にならなくてもいいのに。首に手を回すことで、空気中に漂う親密さがより一層強まった。彼にもそれが分かるのかしら。感じないなんて、鈍感か、無感覚か、石でできているかのどちらかだわ。

彼の広い肩に頭を寄せた時、私は自分の狂おしいほどの心臓の鼓動を意識せずにはいられなかった。あまりにも大きな音なので、彼にも聞こえているのではないかと思った。聞こえないなんて、耳が聞こえないとしか考えられない。彼は驚くほど楽々と私を階段を上がって運んでいった。きっとこういうことには慣れているのね、と私は少し憂鬱に考えた。他の女性を腕に抱いている彼を想像しただけで、身震いがした。私が知る必要のないことだけど、ただ気になってしまったのだ。

彼は今日の早い時間に私の部屋にいたから、どこに向かうべきか正確に知っていた。階段を上がり切ると、私の寝室のある廊下の左側に向かった。私の部屋のドアは少し開いていて、彼はそれを押して開けた。誰かが目を覚まして、この微妙な状況を目撃する前に、素早く中に入った。中に入ると、足でドアを閉め、私をまだ抱きかかえたまま、カチッという音が聞こえた。