救世主

彼の体は意外なほど柔らかく、温かかった。彼の肌の燃えるような温もりが私の肌に触れた時の、くすぐったい感覚を味わいながら、私は目を閉じた。初めて、私が着ているシルクのネグリジェの薄さを意識し、その考えに頬が赤く染まった。でも、暗いから彼には私の服装なんて分からないはず、と自分に言い聞かせた。彼は驚くほど楽々と、まるで羽のように軽いかのように私を抱えて家の中に入った。玄関まで、ほとんど音を立てずに到着した。大柄で筋肉質な体格の男性なのに、まるで猫のように軽やかに動けるのだ。

「いい加減、首に腕を回してくれ。階段から転げ落ちたくないだろう」彼は苛立たしげに言った。私の思考は風に吹き飛ばされたかのように消え去った。下唇を噛みながら、言われた通りにした。この面倒な状況は全て私のせいだと分かっているけど、そんなに明らかに不機嫌にならなくてもいいのに。首に手を回すことで、空気中に漂う親密さがより一層強まった。彼にもそれが分かるのかしら。感じないなんて、鈍感か、無感覚か、石でできているかのどちらかだわ。