恋をしているってわかるのは
眠れなくなったとき
現実が夢よりも
素晴らしくなったから
— ドクター・スース —
***
新婚スイートルームは広々としていて、赤とピンクのインテリアデザインは宿泊客に柔らかな落ち着きを与えるはずが、私の神経には逆効果だった。不安と動揺を感じながら、部屋の中へ渋々一歩踏み出した。豪華な天蓋付きベッドに目が留まると、その小ささに眉をひそめ、カーターのような大柄な男性がどうやって収まるのか疑問に思った。ハネムーンベッドと呼ばれる理由は、恋人同士が互いの腕の中で寄り添えるよう、あえて小さめに設計されているからだ。カーターに床で寝てもらうよう説得できるかもしれないが、私の願いを簡単に聞き入れてくれるだろうか。ソーシャルディスタンスを保つのが賢明かもしれない。
カーターが近づいてきた。部屋が急に狭くなったように感じ、壁が締め付けてくるようだった。彼が近づくにつれ、その存在を強く意識せざるを得なくなり、ついに彼の腕が私の腕に触れた。「大丈夫?」と彼は眉をひそめながら尋ねた。観察力のある目が、私の紅潮した頬と驚いた表情を見つめていた。
「ええ、もちろん」私は嘘をつき、彼の目を避けた。彼は納得していない様子だったが、何も言わなかった。代わりに、ベッドに向かいフェイス・ヴィエンヌを寝かせた。バックパックを下ろし、私の大きなスーツケースの横に置いた。ため息をつくと、靴紐をほどいて靴を脱ぎ、頭の後ろで腕を組んでベッドに横たわった。長い間動かなかったので、眠ってしまったのかと思った。きっと疲れ切っていたのだろう。
彼の足を見つめていることに気づいて恥ずかしくなったが、目を逸らすことができなかった。これまで男性の足に特別な関心を持ったことはなかったのに、今は「セクシー」という言葉で表現したくなるほど、熱心に見つめていた。足を「セクシー」と表現できるとは、この瞬間まで知らなかった。
私は首を振った。このまま見つめ続けたら、カーターが溶けてしまうと自分に言い聞かせた。ようやく視線を外し、分が経つごとに重くなっていくバックパックを肩から降ろした。