黒い車は暑い朝の空の下、高速道路の真ん中を静かに走っていた。まもなく目的地である空港に到着するはずだった。クロフォード邸から車で1時間ほどの距離だ。私は助手席に深く沈み、未知の運命から自分を慰めるために得られる限りの暖かさにしがみついた。この地を去るという考えだけで神経が乱れ、不安と恐怖が内側から私を蝕んでいた。今でもコルドバを離れるなんて信じられない。神様のみぞ知る、成功して戻ってくるまでにどれだけかかるのか。おそらく1年か2年はかかるだろう。
フェイス・ヴィエンヌを胸に抱きしめながら、窓の外を通り過ぎる緑の景色に意識を向けた。最後の最後で怖気づいて家に戻ってしまわないように気を紛らわせるためだ。父や祖母、そして8人の兄弟を失望させたくはない。空港まで送ってもらうと気持ちが悪くなるので、断ることができて良かった。その結果、カーターが運転手として私を目的地まで連れて行くことになった。今彼を見ていると、それは間違った決断だったように思える。
運転席には、クラリッサの大切な庭を丹精込めて手入れする半神のような男が座っていた。いつものように、彼は普段着である白いTシャツを着ていて、それは彼を気品のある姿に見せていた。そして、私が見飽きることのないダメージジーンズは、まるでファッションモデルのようだった。彼の端正な顔には物憂げな表情が浮かんでいた。誰かが亡くなったのかと思うほどだ。濃い眉は運転に集中しながら一直線に寄せられていた。
緊張した強い顎は固く締められ、ハンドルを指の血が通わなくなるほど強く握っていた。彼の奇妙な反応は、戦いに敗れた男のような印象を与えた。車に乗り込んでから一言も発しなかったため、彼が不本意ながら私を空港まで送ることを強いられているのではないかと思った。しかし、もし彼が反対だったとしても、それを口に出すことはなく、私もその質問をする立場にはなかった。
私は肩をすくめ、彼の魅力的な容姿から視線を逸らした。顔を覆う暗い表情にもかかわらず、彼は私にとって魅力的に映った。私が彼に惹かれるのは、外見だけではない。もっと深く、強い何かがあった。愛だろうか?その考えに身震いし、すぐに頭から追い払った。愛というのは大げさかもしれないが、近い表現かもしれない。