もう7時を過ぎていた。静かな夜空には無数の輝く星が散りばめられていた。オレンジ色の月は大きく、地平線に誇らしげに立ち、明るく輝いていた。恋人たちが忍び出て、絵のように美しい星空を眺めるのに最適な夜だった。でも私はバルコニーで、手の届きそうな美しい景色を眺めてはいなかった。星空を見る気分ではなかった。
エースはまだ戻っていなくて、私は彼のことが心配でたまらなかった。先ほど電話をかけてみたけれど、誰も出なかった。そしてエリサが、彼が居間のガラステーブルの上に携帯を置き忘れていることを発見した。予期せぬ訪問者と出かける時、急いでいたのかもしれない。持っていくことを忘れてしまったのだろう。
私は胸の下で腕を組んで、バルコニーの上を行ったり来たりしていた。時間が経つにつれて、不安は深まるばかり。途中で何か起きたのではないか?その考えに身震いした。お願いです、様、そんなことになりませんように、と私は祈った。
心配することはない、と自分に言い聞かせた。エースは一人ではなかった。使用人の観察によると、エースは二人の立派な紳士に付き添われていた。一人目の男性は若く、エースと同年代で、背が高く、ハンサムで、礼儀正しかった。
二人目の男性は二人よりもずっと年上だった。彼はブリタニアの貴族や貴紳が雇う執事だけが着用する、よく磨き上げられた黒い制服を着ていた。
執事と貴族というのは、エースにとっては珍しい訪問者だ。私の知る限り、彼はこの国に親戚も友人もいないはずだ。でも、私はエースのことをそれほど知らない。もしかしたら、彼が言い忘れていた親戚や友人がここにいるのかもしれない。
エースが出かけた瞬間から、何か不快なことが起こりそうな予感が私の中で騒ぎ始めた。その不安は、夕食の時間になってもエースが戻ってこなかった時、さらに強まった。正当な理由もなく、このように姿を消すのは彼らしくない。
私は深いため息をついた。
落ち着いて、フェニックス。私は自分に言い聞かせ、頭の中を駆け巡る否定的な考えを押しのけた。
少し開いていたドアに近づき、中を覗いた。フェイス・ヴィエンヌは、ベビーベッドで平和に眠っていた。彼女が泣き出した時にすぐ聞こえるように、ドアは開けたままにしておいた。彼女が無事でいることに安堵した。