素晴らしい!まったく素晴らしい。私は鏡に映る自分の姿を見つめ、いらだちが募っていった。
昔見た犯罪映画に出てくる、不気味な黒い服を着た強盗そのものだった。
全身鏡で自分の姿を確認するのはこれで3回目だが、まだ納得できない。これは夢なのだろうか。もしそうなら...地獄が始まる前に、今すぐこの悪夢から目覚めたい。
自分の姿を見つめながら、脈は乱れ、こめかみには汗が浮かび、手のひらは氷のように冷たくなった。私はこんな運命を望んでいなかった。でも、続けるしか選択肢はない。
物事がまさに始まろうとしているときに、引き返すことはできなかった。
今夜は逃げ場がない、運命は決まった。これは生死を賭けた状況だ。エースのためにこれをしなければならない。そして何が起ころうと、少なくとも生きて逃げ出すよう最善を尽くさなければ。
長い黒髪をポニーテールにまとめてから、テーブルの上の手袋を取って指にはめた。今夜は指紋を残さないよう、手袋は必須だ。
頑張れフェニックス!と自分を励ましてから、ニット帽を取って被った。
私が滞在している部屋のドアをそっとノックする音が聞こえた。「どうぞ」と私は言い、開くのを待った。
部屋に入ってきたのはキャサリン・グレイスで、全身黒づくめだった。履いているフラットシューズまで漆黒の色だった。彼女はすでに手袋とニット帽を身につけていた。
「準備はできた?」と彼女は私を頭からつま先まで見渡してから、「まあ!黒がよく似合うわね」と付け加えた。その褒め言葉に私の頬が熱くなった。
でもあなたほどじゃない、と私は心の中で思いながら、彼女を頭からつま先まで見渡した。黒がこんなにエレガントに見えるとは思わなかった。キャサリン・グレイスは、どんな色を着ても努力せずとも似合ってしまうのだ。
「ありがとう」と私は我に返って答えた。「あなたは危険な男の家を荒らしに行くというより、ランウェイを歩くみたいね」と私がコメントすると、彼女は私の言葉を面白がっているかのように微笑むだけだった。
「行きましょうか、フェニックス?」今度は彼女は笑いのかけらもない真剣な表情で尋ねた。
私は鏡に映る自分の姿を最後にもう一度見てから、ドアの方へ歩き出した。
「気が変わる前に行きましょう」
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