私は全力を振り絞って、彼の股間を激しく蹴り上げた。一度や二度ではなく、十数回も。ハイヒールの踵が確実に彼の急所に当たるように。
彼は座席から転げ落ち、激痛に苦しみながら、手の届かない場所に落ちた銃を取ることもできなかった。あんな大柄な男が涙を流すほど、その攻撃は痛かったに違いない。
逃げるチャンスを掴み、ボロボロの座席に落ちていた車のキーを掴んだ。車から這い出し、後部座席から子供を連れ出して、男を車の中に閉じ込めた。
疲れ果て、弱り切り、喉は渇いていた。でも生き抜こうとする強い意志が、子供を引きずりながら走るだけの力を与えてくれた。子供は一切声を出さなかった。文句も言わなかった。同年代の子供なら泣き叫んで駄々をこねるはずなのに、彼は違った。
私の傍らで必死に頑張る子供を見ていると胸が痛んだ。可哀想な子供が疲れ果てて倒れた時、私は同情で泣きそうになった。私の脚が走り疲れているのなら、この子供の小さな脚はどれほど辛いことか。今は弱みを見せまいと必死に耐え、膝をついてハイヒールを脱ぎ、子供を抱きかかえた。
でこぼこの舗装が私の繊細な足の裏を傷つけた。鋭い石が踵に食い込み、痛みが走る。焼けるような痛みに顔をゆがめながらも、立ち止まれば足の傷よりもっと酷い怪我で死ぬことになると知っていたので、走り続けた。
痛みは刻一刻と増していった。見なくても、足の傷から血が流れているのは分かった。痛みを無視し、ついに焼けるような痛みが麻痺に変わったことを神に感謝した。
背後で銃声が響き、狂人のように追いかけてきていることを知らせた。その銃声に、命がかかっていることを悟り、さらに速く走った。
レンタカーが視界に入り、そこへ向かって走った。耳元を弾丸が風切り音を立てて通り過ぎた時、私は身震いした。もしその弾が頭に当たっていたら、即死していただろうと思うと背筋が凍った。
風が唸り、彼の声を運んできた。はっきりと聞こえた一言が、私の胸に希望を蘇らせた。弾切れだ。もう無力な武器で私を傷つけることはできない。でも、私が車に辿り着く前に追いつかれたら、日の出まで生きていられるかどうかは神のみぞ知る。
永遠とも思える時間をかけて車に辿り着き、ほっと安堵の涙を流した。ドアを開け、子供を車内に入れてから、運転席に飛び乗ってドアを閉めた。