来客

図書館のドアに柔らかいノックの音が響いた。手に持っていた新聞から顔を上げ、開くのを待ちながらドアを見つめた。すると、トンプソンが入ってきた。

「アレクサンダー夫人、お客様がいらっしゃいました」彼はいつもの形式的な口調で告げた。

「お客様?」私は驚いて繰り返した。

「ハミルトンお嬢様です」彼が言うと、私の額にあった皺がすぐに消えた。訪問者の知らせで、憂鬱な気分が一気に晴れた。

「ハミルトンお嬢様」私は心の中でその名前を繰り返したが、全く思い出せなかった。彼女の容姿を思い出そうとしたが、それも失敗だった。

がっかりして、ため息が漏れた。私は

まだ返事を待っているトンプソンを見上げた。「下で会いましょう」私はそう告げ、急いでソファから立ち上がった。お客様を待たせたくなかった。

「ハミルトンお嬢様には、あなた様の踵のご怪我についてお伝えしてあります。図書館でお会いすることを申し出られました」トンプソンが説明すると、松葉杖に伸ばしていた私の手が下がった。

良かった、と私は思った。松葉杖で階段を降りるという恐ろしい苦労をしなくて済むことに感謝しながら。

「ここで待ちます、トンプソン。ありがとう」私は微笑みながら告げ、ヴィクトリア様式のソファに戻った。初めて会う友人に会えることを楽しみにしながら。おそらく彼女の存在が、失われた記憶の一片を思い出すきっかけになるかもしれない。

「では、すぐにお連れいたします」トンプソンは頭を下げ、ドアの方へ下がった。

彼が去ると、私は新聞を掴んでテーブルの下に隠した。誰にも見られたくなかった。今は、踵の怪我が治ったら仕事を探していることを、自分だけの秘密にしておきたかった。

しばらくして、廊下から足音が聞こえてきた。そして図書館のドアが開いた。トンプソンが入ってきて、背の高い、すらりとした体型の女性が後に続いた。

その女性は極度に緊張しているかのように、図書館の床を見つめていた。ハンドバッグを持つ手は不安そうに震えていた。

「お茶の用意を頼んでくれますか、トンプソン」

「そ、それは不要です」

ハミルトンお嬢様が初めて顔を上げて言った。「長居はいたしません」彼女は付け加え、蒼白な顔で私と目が合った。彼女はとても怯えているように見え、私は自分が彼女を怖がらせているのではないかと考えずにはいられなかった。