第39章 一石二鳥

彼女は近すぎず遠すぎない距離を保ちながら、足音を忍ばせて従い、従業員は彼女の存在に気付かないまま、廊下の突き当たりまで尾行された。

従業員は足を止め、左右を見回して人がいないことを確認すると、携帯電話を取り出した。

どうやってロック解除したのかは分からないが、すぐにバーチャルキーボードで素早く文字を打ち始めた。

園田円香は柱の陰に隠れながら、従業員が何を打っているのかは見えなかったものの、おそらく彼女の携帯電話でメッセージを送っているのだろうと推測した。

すぐに従業員はメッセージを送信し、削除してから電源を切り、近くのゴミ箱に携帯電話を投げ入れた。

全てを済ませると、彼は急いでその場を離れた。

園田円香は柱の陰から出てきて、数歩でゴミ箱の側まで行き、自分の携帯電話を取り出して電源を入れた。

削除されたメッセージを復元して内容を確認した。

園田円香は送信先の番号を見て、意外そうに眉を上げた。林田夫人が従業員に彼女の携帯電話を盗ませてメッセージを送らせたのは、なんと江口侑樹だったのだ!

内容は:30分後に2階の客室で会いたい、非常に重要な話があると。

園田円香は少し考え込んだ。

もともと林田夫人が彼女をこのパーティーに招待したのは、彼女を狙ってのことだと思っていたが...どうやら事態は彼女が想像していたほど単純ではないようだ。

林田夫人が罠にかけようとしているのは、彼女だけではないらしい。

確かに早紀の言う通りだった。この林田母娘の野心は相当なものだ。

それならば...彼女たちが一体何をしようとしているのか、見てやろうじゃないか!

上階の客室か...

園田円香は口元に笑みを浮かべながら、長い髪を手際よく束ね、邪魔なドレスの裾を切り取って、動きやすくした。

彼女はホールに戻り、賑やかな人混みに紛れ込んで、誰にも気付かれないように2階へと上がっていった。

2階は人気がなく、とても静かだった。

彼女は慎重にその客室へと向かい、ドアの前で立ち止まると、まず手を上げてノックをした。

中から何の反応もなかったので、彼女はドアノブを握って回し、中に入った。

素早く室内を見回したが、普通の客室で特に変わったところはなかった。林田夫人の意図を考えていると、外から足音が聞こえてきた。