第40章 クズ男と不倫女

…

宴会場。

執事は林田夫人の側に歩み寄り、彼女の耳元で上階の客室の状況を小声で報告した。

林田夫人は満足げに微笑んだ。「よろしい。9時に正式に放送を始めて。」

「かしこまりました。」執事は壁に掛かった時計を見た。残り数分しかない。

しかし林田夫人は左右を見回し、眉をひそめながら尋ねた。「北斗はどこ？一緒に話をしなければならないのに。」

執事も不思議そうだった。「さっきまでここにいらっしゃったと思うのですが、誰かに呼ばれたか、お手洗いに行かれたのではないでしょうか？」

「今、旦那様をお探ししましょうか？」

時間が迫っているのを見て、林田夫人は小さく舌打ちをし、首を振った。「もういいわ。待っている時間はないわ。大事な用件が先よ。」

「承知いたしました。では夫人、スピーチをお願いいたします。」

林田夫人は髪と裾を軽く整え、優雅で温和な笑顔を浮かべ、参加者の熱烈な拍手の中、優美な足取りで壇上に上がり、皆の方を向いた。

彼女はマイクの前に立ち、笑みを浮かべながら話し始めた。「ご来場の皆様、まずは、お忙しい中、私と夫の銀婚式パーティーにお越しいただき、誠にありがとうございます。私たち夫婦の長年の愛情が今なお変わらないことを皆様に見ていただけることを嬉しく思います。このパーティーだけでなく、金婚式、そして最後まで寄り添って生きていけることを信じております。」

そう言いながら、彼女の笑顔には幸せと優越感が溢れ、参加者たちは羨望のまなざしを向けた。

彼らの社交界では、ほとんどが家族の取り決めによる結婚か、利害関係による結婚で、多くの夫婦は表面上は仲が良いふりをしながら、裏では別々の生活を送っている。林田夫人と林田さんのように、家族の取り決めによる結婚でありながら、お互いを本当に愛し合っているカップルは極めて稀だった。

林田北斗は誰もが認める良き夫で、スキャンダルひとつなく、家庭を大切にし、妻を深く愛し、尊重していた。

林田夫人は参加者たちの拍手と視線を楽しんだ後、続けて言った。「それでは、私たち夫婦が歩んできた25年間の幸せな瞬間をご覧ください。」

再び雷のような拍手が鳴り響いた。

林田夫人の背後の大画面が明るくなったが、そこに映し出されたのは愛情の記録ではなく、ベッドの上で情事を繰り広げる男女の姿だった。