第32章 天も地も助けてくれない

周りの人々は既にスマートフォンを取り出し、写真を撮ったり動画を撮ったりしていた。

園田円香は、この時点で衝突を避けるべきだと分かっていた。そうでなければ、醜い場面になり、また彼女はトレンド入りやニュースのヘッドラインを飾ることになるだろう。

「はい、警察官の方、必ずご協力させていただきます。私の潔白を証明してくださると信じています」

そう言って、彼女は警察官たちに連行されるままにした。

林田茜は彼女が必死に抵抗して暴れる様子を見られなかったことに、少し不満を感じていた。彼女は恨めしそうに言った。「ママ、あの女、本当に怖くないのかしら?それとも演技?」

前回、若林麗が警察に逮捕された時の醜態が今でも目に焼き付いているのに、なぜ園田円香の時は、まるで観光に行くかのように落ち着いているのだろう。

林田夫人も園田円香の冷静さに少し驚いていた。まだ若い女の子なのに、こんな事態に遭遇して動揺しないはずがないと。

しかし彼女は、園田円香が虚勢を張っている可能性が高いと考えていた。たとえそうでなくても構わない。このような若い女の子を潰すのは、蟻を潰すのと同じくらい簡単なことだった。

林田夫人は林田茜の手を軽く叩きながら、「安心なさい。私が既に指示を出してあるわ。彼女が中に入ったら、しっかり『お世話』してもらうことになるわ」

林田茜は「お世話」という言葉の意味を噛み締めると、顔に笑みが浮かんだ。「ママ、さすがですわ。本当に尊敬します」

「そんなことよ」と口では言いながらも、林田夫人は娘の追従を楽しんでいた。眉間には傲慢さが露わになっていた。「これからが本番よ」

「ママ、それって...私が侑樹さんと結婚して、江川家の女主人になるってこと?」林田茜は目を輝かせ、興奮した声で言った。

林田夫人は自信に満ちた様子で頷いた。「この恨みも晴らせたわ。もう、取るに足らない園田円香なんて気にしないで」

「もちろんです!」林田茜は林田夫人を抱きしめながら、続けて答えた。「私が侑樹さんと結婚したら、園田円香なんて私の靴を磨く資格もないわ!」

...

取調室。

園田円香が当時の状況を事実通りに説明した後、警察官による集中的な尋問が始まった。

「千年の朝鮮人参を盗んだのはあなたですね?」警察官はまだ穏やかな態度を保っていた。