第81章 その男は誰?

江口侑樹の眼差しが急に沈み込み、大きな手も同時に握り締められた。

彼はまだ考えていた。こんな夜遅くに、園田円香は大切な弟を置いて一体どこへ行ったのか。数秒間、彼女に何か起きたのではないかと心配していた。

結果はなんとも良かったものだ。男と一緒にホテルに現れるとは?

安藤秘書は江川社長がまだ車から降りないことに困惑し、尋ねようとした矢先、彼が道路の向かい側を凝視しているのを見て、その視線の先を追うと、心臓が一瞬止まりそうになった。

これは...園田さんがどうしてここにいるんだ?そして彼女の隣にいる男は...誰なんだ?

二人はとても親しげで、かなり近しい様子。しかもこんな夜遅く、ホテルの入り口で。これらの要素を組み合わせると、実に怪しいではないか!

安藤秘書は江口侑樹の表情を見るまでもなく、既に恐ろしい殺気を感じていた。

もしかしたら江口侑樹と園田さんにはチャンスがあるかもしれないと思っていたのに、突然こんな展開になって...これからどうすればいいのか?

安藤秘書は頭を掻きながら、覚悟を決めて弱々しく口を開いた。「社長、園田さんがここに来たのは何か重要な用事があるのかもしれません。物事には必ず理由があるはずです。そうですよね?」

ああ、園田さん、私にできるのはここまでです。本当に正当な理由があることを願っています!

ホテルの入り口で、園田円香と男はまだ向かい合って話し込んでいた。まるで二人だけの世界に入り込んでいるかのように、お互いの世界にはお互いしか存在しないかのようだった。

江口侑樹は園田円香を凝視し続け、手の甲の血管が徐々に浮き上がってきた。彼は目を閉じ、胸の中で燃え上がる怒りを何とか抑え込んだ。

物事には必ず理由があるというのか!よし!

江口侑樹は携帯を取り出し、直接園田円香の番号に電話をかけた。

次の瞬間、向こう側から冷たい自動音声が流れてきた:お客様のおかけになった電話番号は、現在通話中です...

園田円香は明らかに電話を受けていないのに通話中と表示される。つまり、彼の電話番号が園田円香にブロックされているということだ。

江口侑樹は怒り狂い、携帯を激しく投げつけ、バンという音とともに地面に叩きつけられた。

安藤秘書はずっと社長の様子を窺っていた。彼が自分の言葉を聞き入れ、即断即決しなかったことに安堵していた。