誰もが愛されたいと願うもの。彼女もそうだった。
世の中の全ての人に愛されることは求めない。ただ、一人でも、彼女の味方になって、世の中の悪と戦ってくれる人がいればいい。
思わず彼女も手を伸ばし、江川おばあさんを強く抱きしめ返した。
「うぅ、私も抱きしめたい!」田中も前に出て、両腕を広げ、江川おばあさんと園田円香を抱きしめた。
三人は子供のように幼稚だったが、それでいて温かい光景だった。
江口侑樹の視線は自然と園田円香の顔に落ち、彼女の涙が目尻からあふれ、頬を伝って流れるのを見つめていた。
彼の手は無意識のうちに上がっていた。
気づいた時には、指先が園田円香の目尻に触れ、涙を拭っていた。
園田円香は固まり、江口侑樹も固まった。
涙で潤んだ瞳は一層黒く輝き、園田円香は江口侑樹を見つめ、瞳の奥には男の姿がくっきりと映っていた。
江口侑樹の指が少し硬くなり、素早く引っ込めると、ぎこちなく一言吐き出した。「醜い!」
「……」
その後、園田円香を見ることもなく、長い足を大きく踏み出し、階段を上がっていった。
園田円香は何度か瞬きをした。
彼女が泣いているのに、醜いと思うなら見なければいいのに、本当に寝ても覚めても攻撃される!
江川おばあさんも聞き過ごせず、彼の背中に向かって怒鳴った。「このバカ息子、物の言い方を知らないのか。話せないなら黙っていればいいのに!」
江口侑樹は振り返ることもなく、二階の階段の入り口で姿を消した。
江川おばあさんは呆れ笑いをし、田中に愚痴った。「あの子ったら、今日はやっと夫らしい振る舞いを見せたと思ったのに、結局……三秒も持たなかったわ!」
田中は深く同意して頷いた。「若旦那はあんなに綺麗な顔をしているのに無駄ですね!本当に口を開かない方がいい。口を開くと雰囲気を台無しにしてしまいます!」
こんな感動的な場面で、奥様を抱きしめて慰めれば、二人の関係はぐっと深まったはずなのに。
二人の愚痴を聞いて、園田円香は思わず笑ってしまった。
英雄の見る所は同じようで、彼女も江口侑樹は見た目が良いだけに、口を開かなければいいのにと思った!