第157章 侑樹、私は帰ってきた

園田円香はコップを置き、姿勢を正して彼を見つめながら言った。「佐藤先生、おっしゃりたいことがありましたら、どうぞ」

「お」...

口まで出かかった言葉が、この一文字のせいで、喉に詰まってしまった。

佐藤先生は唇を固く結び、しばらく声を出すことができなかった。

彼は本来...少なくとも、自分の気持ちを彼女にきちんと伝えたかった。少なくとも、言い出せなかった後悔を抱えたまま去りたくなかった。

しかし、言ってしまえば、後悔はなくなるかもしれないが、園田円香に負担をかけてしまうのではないかと心配だった。

応えられない感情を抱え込むのは、とても辛いことだ。

だからこそ多くの人は、感情を心の中に秘めたままにして、口に出すことを避ける。言ってしまえば、友達としての関係さえも失うかもしれないから。

佐藤先生は長い間葛藤の表情を見せた後、結局...言い出す勇気が出なかった。

彼は彼女をじっと見つめながら、心の中で一言一言つぶやいた：円香、僕は君が好きだ。

君はとても素晴らしい女性だ。残念なことに、海外にいた時に自分の気持ちに気づくのが遅すぎて、彼女と擦れ違ってしまった。

江口侑樹が羨ましい。一度擦れ違っても、やり直すチャンスがあるのだから。でも彼の場合は、擦れ違いは永遠の擦れ違いになってしまった。

これからの彼女が、いつも幸せで楽しく過ごせますように。

そう心の中で言い終えてから、やっと小さな声で言った。「円香、これからも何かあったら、僕に頼ってください」

彼のあまりにも深刻な表情に何かと思ったけど、こんなことだったなんて...

彼女は少し安堵の息をつき、微笑んで答えた。「佐藤先生、あなたのような友人がいて本当に幸運です。はい、これからもし何か私にできることがありましたら、遠慮なく言ってくださいね！」

彼女の満面の笑顔を見て、彼は思わず手を伸ばし、彼女の頭を撫でようとしたが、すぐに自制した。

彼は唇を開き、とても小さな声で「うん」と答えた。

携帯の着信音が鳴り、佐藤先生は着信画面を確認すると、運転手からの電話だった。おそらく空港に向かう時間を知らせてきたのだろう。

彼は電話を切り、再び口を開いた。「円香、もう行かなければ」

「じゃあ、私が見送り...」