第154章 あなたの好きなものは、あなたのもの

「そんなに神秘的なの?」

園田円香は好奇心を抑えきれず、「ちょっとだけヒント、教えてよ?」

「ダメだ」男は頑として譲らなかった。

「……じゃあ、少なくとも驚きなのか嬉しいことなのか、教えてよ?」

彼女が余計な心配をするのも無理はない。江口侑樹というこの男はいつも予想外なことをする。彼女は平穏な日々に、また何か予期せぬことが起きないことを願っていた。

赤信号で停車した時、男は片手を空け、大きな手で彼女の頭を優しく撫でて安心させようとした。

彼が十分な安心感を与えられなかったからこそ、彼女はいつもこんなに不安になるのだ。

不思議なことに、江口侑樹は彼女の質問に答えなかったが、このちょっとした仕草だけで、園田円香の不安な気持ちは本当に少しずつ消えていった。

およそ30分以上経って、車はようやく停まった。

園田円香は目の前の大型ショッピングモールを見て、少し戸惑った。江口侑樹が彼女をここに連れてきた理由は何だろう?何か買い物でもするのだろうか?

江口侑樹は先に車を降り、助手席側に回って、ドアを開け、少し身を屈めて車内に入り、彼女のシートベルトを外しながら優しく言った。「降りよう」

園田円香が車を降りると、江口侑樹は彼女の手を取り、長い足で中へと歩き出した。

このショッピングモールには多くの高級ブランドが集まっていた。江口侑樹は真っすぐ前を見たまま、園田円香を連れてVIP専用エレベーターに乗り、最上階で降りた。

出るとすぐに、とても豪華な装飾が施された衣料品店があり、店長がすでにそこで待っていた。江口侑樹と園田円香が入ってくるのを見て、深々と腰を曲げて挨拶した。「江川社長、江川夫人、いらっしゃいませ」

江口侑樹は軽く顎を上げ、応答とした。

園田円香は丁寧に軽く頭を下げた。

彼女は店内を大まかに見回して、ここが普通の衣料品店ではないことがわかった。もし彼女の推測が正しければ、ここは最高級ラインの衣料品店で、ロゴのない完全オーダーメイドの服を扱っている。

どの服やアクセサリーも、その価格を聞けば驚くほどだ。

店長は案内するジェスチャーをして、「お茶とお菓子をご用意しております。こちらへどうぞ」