園田円香は振り返り、もう一度手を上げて、優しく聡の頭を撫でた。「聡、さようなら。お姉ちゃんはまた会いに来るからね」
聡はまだ何の反応も示さず、先ほど彼女を見上げた瞬間は、まるで幻のようだった。
「聡のお母さん、それじゃあ私は失礼します」
「ええ、お気をつけて」
園田円香は病室を出て、その場で数秒考え込んでから、携帯を取り出して電話をかけた。
…
その後の三日間、園田円香はどこにも行かず、ただ家で江川おばあさんと過ごし、外出することもなかった。
その間、坂本波から電話があり、人事部に連絡済みで、いつでもさくらテレビに入社できると伝えられた。
彼女が本当に大人しくなったのを見てか、坂本波は付け加えるように尋ねた。「授賞式に来ないか?」
元々は彼女の気持ちを考えて誘わなかったのだが、今や彼女がこれほど分別があるのを見て、坂本波は多少なりとも彼女を取り込みたいと思った。
結局のところ、安藤吉実にしても園田円香にしても、実力のある人材だった。
味方を一人増やす方が、敵を作るよりもいいに決まっている。
園田円香は光栄そうな口調で答えた。「坂本監督がおっしゃるなら、もちろん伺わせていただきます。式典には多くの上司や同僚、他のメディアの方々もいらっしゃいますよね?これからお付き合いする方々とお知り合いになれる良い機会です」
坂本監督は満足げに笑みを浮かべた。「円香、安心しろ。お前のような分別のある子は、きっと大きな成功を収めるはずだ。よし、招待状を送らせよう。当日会おう」
「ご期待に添えるよう頑張ります」
時は瞬く間に過ぎ、今夜8時から授賞式が行われる。
今回のコンテストは注目度が高く、授賞式も最高級で開催される運びとなり、局は市の中心部にある体育館を貸し切り、業界の名だたる関係者を招いて盛大に執り行われることになった。
園田円香は江川おばあさんの強い要望で、綺麗に着飾り、専属の運転手に体育館まで送ってもらった。
見栄は欠かせない。
園田円香が車から降りた時、ちょうど安藤吉実も別の車から降りてきた。今夜の彼女は特に念入りにお洒落をしており、いつもの清純さがやや物足りない化粧を捨て、レモンイエローのロングドレスが目を引き、肌の白さを一層際立たせ、まるで絵から抜け出してきた美女のようだった。