彼女は自分の慎重さを知っていた。江口侑樹を信じたくないわけではなく...人の心には自己防衛機制があるのだ。
かつて江口侑樹に捨てられた経験があり、今でもその答えを尋ねる勇気がない。そのため、心の奥底のある場所が、開くことができないままだった。
彼女は努力していた。しかし努力する一方で、つい試したくなり、尋ねてしまい、自分の安心感を得ようとしていた。
江口侑樹は彼女の瞳を深く見つめていた。彼は彼女の目に宿る揺らぎと、深く隠された不安を見て取ることができ、思わず唇を噛んだ。
やはり自分の努力が足りないからこそ、彼女は全面的に信頼できないのだ。
彼は大きな手で彼女の髪を優しく撫で、静かに口を開いて、かすれた声で言った。「もちろんだよ」
シンプルな二文字の言葉が、まるで小石のように園田円香の心の湖に投げ込まれ、幾重もの波紋を広げた。
園田円香は口元に微かな笑みを浮かべ、黒い瞳で彼を見返しながら、軽やかだが真剣に頷いた。「うん、これからは...あなたに頼ることを学んでいくわ」
そして茶目っ気たっぷりに瞬きをして、「その時は、面倒くさがったり、うるさいって思わないでよ」
彼女の言葉に笑みを誘われたのか、江口侑樹は彼女の頭を撫でる力を少し強めて、「好きなだけうるさくしていいよ」
運転中の安藤秘書は、身体が震え、アクセルをブレーキと間違えそうになった。
イチャイチャしているカップルなんて、本当に嫌だ!
ふん、今度の休暇には、母が紹介してくれた見合い相手に会いに行こう。強制的な恋人自慢は、自分から拒否するぞ!
...
別荘にて。
江口侑樹は園田円香を抱きながら中に入った。リビングにまだ明かりが付いているのを見て、二人は顔を見合わせ、園田円香が先に不思議そうに声を上げた。「こんな遅くまで、田中さんはドラマを見ているのかしら?」
田中は恋愛ドラマの熱心なファンで、よく夜更かしをしてドラマを見ていた。
二人は靴を脱いで進んでいくと、田中だけでなく、江川おばあさんもいた。
二人はドラマを見ているわけではなく、ソファに座って、二つの頭が寄り添い、老眼鏡をかけて、スマートフォンを見ながら笑っていた。彼女と江口侑樹が帰ってきたことにも気付いていなかった。
園田円香はますます好奇心をそそられた。これはどうしたことだろう?