田中は顔を上げ、江川おばあさんの目を見つめ、口を少し開いたものの、何か言いかねているようでした。
田中のことを一番よく知っている江川おばあさんは、その様子を見て、不吉な予感が胸をよぎりました。「田中さん、言いたいことがあるなら、はっきり言ってちょうだい。私はもう年だから、驚かせないでね!」
そう言いながら、すぐに顔を近づけ、田中のスマートフォンの画面を覗き込みました。
画面には、授賞式での安藤吉実の写真が映っていました。
江川おばあさんは何かと思いきや、それだけだったので、不思議そうに口を開きました。「これを見て、そんなに深刻な顔をするの?」
また誰かが可愛くて美しく優しい円香を中傷しているのかと思ったのです。
「違うんです、おばあさま」田中は画面上で指を動かし、写真を拡大しました。「よく見てください。この安藤吉実さん、どこか見覚えがありませんか?」
そう言われて、江川おばあさんは老眼鏡を直し、もう一度じっくりと見つめると、その目に動揺が浮かびました。
「これは...この安藤吉実というのは...もしかして...昔、侑樹の傍にいつもいた女の子?」
田中は頷きました。「私もそう思います」
「彼女は海外に行ったはずじゃなかったの?」江川おばあさんも眉間にしわを寄せました。「私たちの見間違いじゃないかしら、人は似ることもあるものね」
田中も完全には確信が持てませんでした。一つには、幼い頃のあの女の子は安藤という姓ではなかったこと、二つには、これだけ年月が経っているため、本当に同一人物かどうか判断できないことでした。
「おばあさま、調べさせましょうか?」田中は尋ねました。
江川おばあさんは思わず二階を見上げました。若い二人の関係がようやく進展し始めたところなのに、何か予期せぬことが起きては困ります。慎重にならなければ。
彼女は頷きました。「調べてみましょう」
違っていれば、それに越したことはない。
もし本当だとしたら...
このタイミングで帰国し、しかも円香の近くに現れるなんて、どういうつもりなのでしょう?
江川おばあさんの目の奥に、次第に鋭い光が宿りました。
...
江口侑樹は園田円香を抱えて部屋に戻り、柔らかなベッドに寝かせました。そして、すぐに身を屈めて覆いかぶさり、大きな体が彼女の上に浮かびました。