彼女のその口調に、園田円香は思わず顔を向けた。
宇野晴華は相手の話を聞きながら頷き、「はい、分かりました。はいはい、失礼します」と応じた。
電話を切ると、宇野晴華は園田円香の方を向き、申し訳なさそうな口調で言った。「円香さん、申し訳ありません。今日新しい同僚が入社することになっていて、もうすぐ到着するんです。少しお待ちいただいて、入社手続きが済んだら、一緒にさくらテレビをご案内させていただきます」
なるほど。
園田円香はこの程度の時間なら構わないと思い、理解を示すように頷いた。「大丈夫です。少し待ちましょう」
「ありがとうございます」宇野晴華は笑顔で言った。「では、お座りください」
園田円香がソファに座ると、宇野晴華はミネラルウォーターを一本持ってきて彼女の前に置いた。「どうぞ、お飲みください」
「ありがとうございます」
園田円香はキャップを開け、一口飲んだ。
ただ、彼女には少し不思議に思えた。今年のさくらテレビは、このコンテストを通じて新しいアナウンサーを選抜することになっていたため、他の採用計画はないはずだった。
彼女がコンテストで優勝したので、唯一の採用枠は彼女のものだったはず。理屈から言えば、他の人が入社するはずがないのだが。
もしかして...特別採用か何かだろうか?
約2分ほど経過したところで、オフィスのドアがノックされた。
宇野晴華は「新しい同僚が来たようですね」と言った。
そう言いながら、ソファから立ち上がってドアの方へ歩き、開けた。
園田円香も思わず目を向けた。この新しい同僚に対して、かなり興味があった。
ドアが少しずつ開かれ、入口に立っている新入社員の顔が園田円香の視界に徐々に入ってきた。彼女の唇の端に浮かんでいた微かな笑みが、ゆっくりと消えていった。
控えめな化粧だが、整った美しい顔立ちは春風のように爽やかで、変わらぬ無害な笑顔を浮かべていた。
安藤吉実以外の誰でもなかった。
園田円香は先ほどまで様々な推測をしていたが、確かに...彼女のことは考えもしなかった。
この数日間、彼女が静かにしていて姿を見せなかったのは、この一手のためだったのだろう。
「安藤さん、こんにちは」宇野晴華が先に挨拶を切り出した。