第196章 彼は安藤吉実の後ろ盾？

園田円香は彼女の表情を見て、少し驚いて「早紀、どうしたの？何か見えたの？」と尋ねた。

彼女は話しながら振り返り、染野早紀の視線の先を追うと、さくらテレビの入り口に立っている安藤吉実の姿が見えた。

安藤吉実を見たからなのか？でも染野早紀は安藤吉実を知らないはずなのに……

「なぜ彼女がここにいるの？」染野早紀は冷たく言った。

その「彼女」が安藤吉実を指していることは明らかだった。

園田円香は好奇心でいっぱいだったが、まずは答えた。「たぶん彼女の彼氏が助けてくれたんだと思う。今日、私と一緒に入社したの」

この答えを聞いて、染野早紀の表情はさらに冷たくなった。

「早紀、どうしたの？」園田円香は染野早紀のこんな表情を見るのは珍しく、美しい眉を軽く寄せた。

しかし染野早紀は彼女に答えず、ただ「円香、ちょっと待っていて」と言い残した。

彼女はシートベルトを外し、ドアを開けて車を降り、雪のように白く細い長い脚でハイヒールを履いたまま、真っすぐに安藤吉実の方へ歩いていった。

「早紀！」園田円香は思わず彼女を呼んだ。

呼び止められないのを見て、彼女は心配になり、自分もドアを開けて車を降り、後を追った。

染野早紀は安藤吉実の前に立ち、安藤吉実の身長が半頭分低かったため、見下ろすような形で、冷艶な表情で圧倒的な存在感を放っていた。

安藤吉実はいつもの無邪気な白百合のような表情で、澄んだ瞳で染野早紀を見つめ、柔らかく「あなたは？」と尋ねた。

「染野早紀よ。秦野慶典の妻」染野早紀は簡潔に答えた。

追いかけてきた園田円香は、この自己紹介を聞いて驚いて足を止めた。染野早紀の自己紹介には今まで一度も秦野慶典の名前が出てこなかったし、むしろ彼との関係を切り離したがっていたのに、今回は珍しく秦野慶典の名前を出したのだ。

一体どういうことだろう？

「あぁ、慶典さんの奥様なのね」安藤吉実は何かを悟ったかのように、すぐに甘い笑顔を見せた。「お噂はかねがね」

染野早紀も口元を緩め、彼女に手を差し出した。

安藤吉実も手を差し出し、握手を交わした。

通常、礼儀的な握手は軽く握って離すものだが、安藤吉実が染野早紀と手を握ると、彼女の手に強い力がかかり、痛みを感じた。