「そして、あなたも少しずつ侑樹に心を動かされていったのね……」
ここまで話して、安藤吉実は笑顔を消した。「正直に言うと、女として、深く愛している男が毎日他の女の側にいるのを見るのは、たとえ演技だとしても辛いわ。でも侑樹は私たちの将来のためにそうしているの。だから我慢するしかないの」
「でもね、侑樹は私を苦しめたくないの。私が辛い思いをしているのを知って、だから別の方法で私を喜ばせようとしてくれるの」
安藤吉実は頬杖をつきながら、甘い笑みを浮かべた。
「証拠が欲しいって?もちろん見せてあげられるわ。私たちが初めて対決した時、私はチャンピオンの資格を剥奪されて、もうさくらテレビには入れないはずだった。でも侑樹は私がさくらテレビに入りたいって夢を知っていたから、入社資格を取らせてくれたの。これは周知の事実でしょう?」
園田円香はまだ何も言わなかった。
安藤吉実は笑った。「ああ、物的証拠が必要なのね?」
彼女は立ち上がり、服を掛けている場所まで歩いて行き、そこからバッグを取って戻ってきた。
彼女はそのバッグをテーブルの上に置き、園田円香の方に押しやった。「自分で見てみなさい」
園田円香の視線は、その大きなバッグに落ちた。
中に何が入っているのかは分からなかったが、この瞬間、心が少しも揺れなかったと言えば、それは嘘になるだろう。
どんなに冷静で、落ち着いていて、理性的であっても、安藤吉実のこの一連の言葉の中で、不安を感じずにはいられなかった。
なぜなら安藤吉実の言葉は、時系列で考えると、一つ一つが全て辻褄が合っていたからだ。
彼女と江口侑樹の関係は、最初は侑樹が彼女を計算づくで結婚させた時、侑樹が彼女の策略を誤解して、彼女を嫌悪し、復讐のために結婚したと言えた。
その後、彼らの関係は確かにひどいものだった。お互いを傷つけ合い、嫌い合っていた。
江川おばあさんが間に入って緩衝材になっていなければ、彼らはとっくに離婚して、それぞれの道を歩んでいたかもしれない。
後に彼らの関係が変わったのは、彼女が両親の恥知らずな行為に追い詰められ、全世界の前で両親と絶縁せざるを得なくなったからだった。
あの時、記者会見で、侑樹は初めて彼女の側に立ち、彼らの結婚を公表し、彼女と共に、恥知らずな両親と完全に決別した。