吉田文彦は典型的な理系男子で、話し方も堅苦しく、直接的に「江川社長、お預かりした監視カメラの映像は修復が完了し、ご指定の時間帯も切り取りました。今すぐお送りいたします」と言った。
江口侑樹は口角を上げ、満足げに「よし」と答えた。
江川グループは、一人一人が特別な技能を持っていた。
電話を切った後、江口侑樹は車を路肩に停め、助手席に置いてあったノートパソコンを取り、開いてメールを確認した。
吉田文彦が修復した映像を送ってきており、彼は指先でタッチパッドを滑らせ、クリックした。
映像を全て見終わった後、適当に一時停止をクリックし、画面上の人影に視線を落とした。
予想通り、清掃員を装って彼の部屋に侵入した者がいた。
ただし、部屋の中には監視カメラが設置されていなかったため、出入り口の映像しか撮影されていなかった。
スリムな体型で、間違いなく女性だった。
しかし、完全武装しており、顔は一切見えず、さらに監視カメラの位置も把握していて意図的に避けていたため、映像からは顔を確認することができなかった。
江口侑樹は膝の上で指先を規則正しく叩いていた。
彼は黒い瞳で静かにその人影を十数秒見つめ、突然笑った。
彼の記憶力は抜群で、ほぼ一度見たものは忘れないと言えるほどで、この人影は見覚えがあった。
午後、病院で擦れ違った人影ではないか。
昨日はホテルの部屋で、今日は病院か。面白い。
江口侑樹は口角を歪め、ノートパソコンの蓋を手のひらで押さえて閉じ、助手席に投げ返した。
彼は携帯電話を取り、電話をかけた。
相手はすぐに出て、冷たい声で「江川社長」と言った。
江口侑樹も無駄話はせず、直接命令を下した。「ある件を処理してもらいたい」
相手は躊躇なく「承知しました」と応じた。
江口侑樹は唇を開き、冷たく一言を告げた。
相手は一瞬躊躇して尋ねた。「生かしておくのですか、それとも始末しますか?」
江口侑樹は残虐な笑みを浮かべながら、まるで天気の話でもするかのように自然な声で答えた。「いつも通りだ」
相手は「はい!」と返事をした。
...
病室にて。