第345章 智則に凶事が迫る

傍にいた染野早紀は彼女の表情がおかしいのを見て、急いで「円香、どうしたの？」と声をかけた。

園田円香は呆然と彼女を見つめ、機械的に口を開き、佐藤先生から聞いた知らせを伝えた。「智則が...いなくなったの」

染野早紀も何か起きたことは分かっていたが、その言葉を聞いた時、それでも大きな衝撃を受け、信じられなかった。

彼女は目を少し見開いて「どうして...昨日の夜、私たちは智則と話したばかりなのに。彼は、いつ居なくなったの？」

「佐藤先生も分からないって...今朝、智則を起こして朝ご飯を食べさせようとした時に、姿が見えなかったの」

「自分で遊びに行ったんじゃない？」染野早紀は推測した。

園田円香は首を振った。「佐藤先生はもう団地と周辺を探し回ったけど、見つからなかったの。それに、私が智則に買った位置情報付きの腕時計も、下のゴミ箱に捨てられていたわ。もし智則が自分で遊びに行ったのなら、腕時計を捨てるはずがないわ！」

絶対に何かあったに違いない！

染野早紀の瞳には濃い心配の色が浮かんでいた。「じゃあ、侵入して子供を連れ去ったってこと？こんなに音もなく子供を連れ去れるなんて、一体誰が？誰が子供に危害を加えようとするの？」

園田円香は声を低く痛ましげに言った。「分からないわ。私には見当もつかない。佐藤先生は監視カメラを確認しに行ったわ。何か映っていないか見るために」

でも、こういう明確な目的を持った犯行は、ほとんどがプロの仕業で、必ずカメラを避けているはず。だから、期待は薄いのだけど！

染野早紀はそんなことは言えず、ただ園田円香を精一杯慰めるしかなかった。「円香、大丈夫よ。きっと何も起きないわ。私たちの智則は運が強いの。前にも何度も危機を乗り越えてきたでしょう。今回もきっと大丈夫！」

園田円香は言葉が出なかった。

いつでも冷静でいられる彼女も、理性的に分析できる彼女も、今は智則が失踪して、頭の中が混乱して、まともに考えることができなかった。

まるで首を大きな手で強く絞められているかのように、息ができず、酸素が足りず、頭の中が真っ白になった。

染野早紀も今は言葉がどれほど空しいかを知っていた。彼女はただ両腕を広げ、強く彼女を抱きしめ、少しでも温もりと力を与えようとした。