第358章 株式の贈与

江川おばあさんも遠回しな言い方はせず、きっぱりと命じた。「安藤さん、明後日の取締役会の手配をお願いします」

「え?」安藤秘書は数秒間呆然とした。「取締役会ですか?」

「ええ、そうよ」

江川おばあさんは安藤秘書の返事を待たずに、電話を切った。

彼女のそんな迅速な行動を見て、園田円香も困惑した表情を浮かべた。「おばあさま、一体何をするつもりなんですか?」

江川おばあさんは茶目っ気たっぷりに笑って、「おばあさまはね...あなたのアラジンの魔法のランプになるのよ!」

「...そういう意味で聞いているわけではないのに」園田円香は諦めた様子で言った。

「円香や、この方法で一時的に江口侑樹の離婚の話を引き延ばすことはできるわ。でも最終的にうまくいくかどうかは、あなた次第よ...」

結局のところ、恋愛の問題は強制できるものではないのだから。

以前は自分が執着して、二人を引き合わせようとしたけれど、今は...二人の縁に任せるしかないわね。

...

三日間はあっという間に過ぎ、今日は園田円香が江口侑樹に返事を出す日だった。

同時に、江川おばあさまが取締役会を開く日でもあった。

午前十時、江川グループの会議室。

江川おばあさまは五年前に江川グループを江口侑樹に譲渡して以来、表舞台から退き、グループの運営には一切関与していなかった。誰も彼女が突然取締役会を招集するとは思っていなかった。

江川おばあさまが現役だった頃は、手腕の鋭い女性実業家として知られていた。江川お爺さまが他界し、江口侑樹がまだ幼かった時期に、彼女は一人で江川グループを支え、多くの成果を上げた。現在の取締役の多くは、当時彼女と共に奮闘した人々で、彼女に対して非常に敬意を払っている。

そのため今日は、取締役全員が一人も欠けることなく出席していた。

壁の時計が十時五分を指しても、まだ江川おばあさまの姿が見えなくても、誰も不満げな表情を見せなかった。

誰もが江川おばあさまが最近大きな手術を受け、死の淵から戻ってきたばかりだということを知っていた。お年寄りの体調不良で遅刻したり、ゆっくり来たりするのは理解できることだった。

江口侑樹は主席の席に座り、端正な顔立ちは相変わらず無表情で、指先でテーブルを軽くたたきながら、瞳の奥には何を考えているのか分からない様子だった。