実は彼女は江川おばあさんが保有している株式を全て無条件で彼女に贈ると聞いた時、非常に驚いていた。
現在の江川グループの時価総額を考えると、25パーセントの株式は、莫大な富と言えるだろう。
功なくして禄を受けず、まして江川おばあさんの全財産に等しいものだから、園田円香は当然その株式を受け取るわけにはいかなかった。
しかし、その時の江川おばあさんの言葉が彼女を説得した。
「私が持っている株式は、実際には江口侑樹の株式と同じようなものよ。ただ私がまだ生きているから、株式は私の手元にあるだけで、私が死んだら、私の財産は全て侑樹のものになるわ。」
「株式をあなたに譲渡するのは、彼があなたにしたことへの補償のようなものよ。今は彼があんな状態になってしまったけれど、血は水よりも濃いもの。私は結局彼の祖母なの。私は彼に何もできないし、彼も私に何もできない。これが私にできる唯一のこと、彼のため、そしてあなたのためにできることなの。だから円香、受け取って。」
「どんなに財産があっても、生まれる時も死ぬ時も持っていけないわ。私の年になると、何でも経験して、何も不自由していない。この株式を私の手元に置いておくより、あなたに持たせて、やりたいことをやらせた方がいいわ!」
これらの言葉を聞いて、彼女は断る言葉を言えなくなった。
一つは江川おばあさんの気持ちに感動したこと、もう一つは...この株式で少なくとも江口侑樹を牽制できること。短期間で彼が強制的に離婚することはできず、そうすれば彼女には江口侑樹の側にいて、智則の居場所を突き止める機会があった。
もちろん、運が良ければ、智則を見つけた後、株式を江川おばあさんに返すつもりだった。今は「一時的な借用」に過ぎない。
...
会議が終わり、取締役たちは議論しながら退室した。
すぐに、広い会議室には江口侑樹と園田円香だけが残った。
江口侑樹は目を上げて園田円香を見つめ、唇を歪めながら冷ややかに言った。「園田円香、君は本当に毎回、私を驚かせるね。」
前回は祖母に彼女のために、病院から無理して来させて命を救わせた。
今回は祖母に全財産を出させて、彼女を支持して彼と対峙させた。