第375章 これが彼の最大の私心

受信箱のリストに、彼女の見覚えのあるIDが入っていた。

これは佐藤先生のプライベートメールで、仕事用ではない。メールのやり取りも全て私事だった。佐藤先生と彼は...一体どんな私的なやり取りがあったのだろう?

思わず日時を確認すると、なんと...3年前、彼女があの殺し屋に連れ去られる...前日だった。

心の中で何かを感じ取り、園田円香は自制が効かなかった。彼女の手はすでにマウスを握り、そのメールの上に移動させ、クリックして開いた。

気がついた時には、彼女の視線はすでにその内容に落ちていた。

とても短い一文——園田円香が危険だ。

園田円香は呆然と見つめ、頭の中がぐるぐると回っているような感覚だった。

つまり...佐藤先生が3年前に駆けつけて、彼女を救うことができたのは、彼が言っていたような、たまたまアメリカにいて、ジェームズ博士から電話を受けたからではなかった。

そうではなく、このメールを事前に受け取っていたから、アメリカに向かったのだ。

佐藤先生は電話を切り、テラスから戻ってきた時、ちょうど園田円香がぼんやりとソファに座り、ノートパソコンの画面を見つめているところだった。

彼は一瞬戸惑い、二歩前に進み、視線も画面に向けた時、足を止めた。

しばらくの沈黙の後、園田円香はようやくゆっくりと瞼を上げ、佐藤先生を見た。

彼女は手を伸ばし、パソコンの画面を彼の方に向け、ゆっくりと口を開いた。「このメールのことを、私に一度も話してくれなかったわね。」

佐藤先生は黙って彼女と数秒間見つめ合い、低い声で言った。「最初は、私もこのメールの内容が本当なのか嘘なのか分からなかったんです。万が一のために、アメリカに行っただけです。もちろん、行って本当に良かった。そうでなければ...もう二度と会えなかったでしょうから。」

少し間を置いて、彼は付け加えた。「その後、多くのことが起きて、このメールのことは忘れていました。」

園田円香は静かに聞いていた。彼の説明に対して何も反論せず、ただ尋ねた。「じゃあ...このメールを送ってきたIDの持ち主が誰か、知っていますか?」

JANDS。

このメールアドレスは、園田円香が当時江口侑樹のために考えた登録名で、二人の姓の頭文字を組み合わせたものだった。