第376章 ごめんなさい、でも後悔はしない

園田円香が悲しそうに泣いているのを見て、佐藤先生の目にも赤みが浮かんできた。

しばらくして、彼は近づき、しゃがみ込んで、ティッシュを取り出して彼女の涙を拭いた。かすれた声で「円香、ごめん」と言った。

園田円香は軽く目を閉じ、深呼吸を数回して、両手で顔の涙跡を強く拭い取った。

佐藤先生は手を下ろし、手の中のティッシュを見つめながら、再び低い声で言った。「でも、後悔はしていない」

もし時間を巻き戻せたとしても、彼は同じ選択をするだろう。この件を隠し通すという選択を。

医師には博愛の精神が必要だが、一人の男として、彼もただの普通の男に過ぎない。自分の心に正直に従い、わずかな可能性にすがりたかっただけだ。

園田円香は目を開けて彼を見た。

佐藤先生には私心があったとはいえ、彼女は責めることができなかった。確かにあの時の彼女は、心身ともにボロボロで、これ以上の衝撃に耐えられなかったのだから。

もしあの時にこのことを知っていたら、おそらく放っておくことはできず、躊躇なく帰国していたかもしれない。

しかしそれは必ずしも勝てる戦いではなく、むしろ勝算は極めて低かった。一度関わってしまえば、智則を無事に産むことさえできず、今のような素晴らしい智則を持つことはできなかったかもしれない。

彼女と智則が今日まで無事に生きてこられたのは、佐藤先生のおかげであり、彼が秘密を守ってくれたからこそだった。

園田円香は懸命に微笑みを作って「佐藤先生、責めていませんよ」と言った。

しかしその言葉は佐藤先生を喜ばせるどころか、むしろ彼の指が震えた。

彼は必死に指を握りしめ、何かを掴もうとした。

園田円香は鼻をすすり、さらに言った。「でも今は...償わなければなりません」

このメールを見る前まで、彼女は得失を考え、この危険な状況に足を踏み入れるべきか迷い、冷静に分析して、江口侑樹の生活に関わらずに智則を救う方法はないかと考えていた。

しかし今は、江口侑樹が彼女のためにしてくれたことを知った後では、もう無関心でいられなかった。

突然、彼女の手が佐藤先生に強く握られた。

園田円香は驚き、黒い瞳を少し見開いて「どうしたんですか?」と聞いた。

佐藤先生の力が少し強く、彼は彼女をじっと見つめながら、口を開いた。「ただの...償いだけですよね?」