江口侑樹は少し首を傾げ、冷笑を浮かべながら、携帯電話を取り出して電話をかけた。
相手が電話に出るとすぐに、彼は直接言った。「迎えに来い。」
ボディーガードは答えた。「はい、江川社長!」
電話を切ると、彼はズボンのポケットからタバコを取り出し、一本を口にくわえ、ライターで火をつけた。
彼は一服吸い、煙の輪を吐き出した。
目の前に霧が立ち込める中、前方の車を見ると、火の勢いが強まり、ボンネット全体が燃えていた。
園田円香との短い戦いで、彼女を嫌悪していたものの、頭の切れる女だということは認めざるを得なかった。
もし...彼らが宿敵でなく、このような立場や方法で出会っていなければ、おそらく、彼はこのような女性を評価していたかもしれない。
おそらくあと1分で、車は爆発するだろう。
江口侑樹は煙草の灰を払い、黒い瞳を再び園田円香の蒼白い顔に向けた。
本当に、少し惜しいな。
30秒があっという間に過ぎ、車の火勢はますます強くなり、熱さで...園田円香の顔が赤くなっていた。
江口侑樹は煙草の吸い殻を地面に投げ、靴で火を消した。
彼は体を回し、歩き出そうとした。
しかし何故か、彼の足は地面に釘付けになったかのように、どうしても上がらなかった。
今は体調も戻り、力も回復していたのに、なぜか両足が言うことを聞かないのだ。
江口侑樹は思わず振り返り、火の中にいる園田円香をもう一度見つめると、不思議な衝動に駆られた。
そして、電光石火の速さで園田円香に向かって走り出した。
運転席側のドアは彼の車のフロントで塞がれていたため、助手席側に回り、力強くドアを開けた。
園田円香の体はシートベルトで固定され、エアバッグにも阻まれていた。そして彼には時間が残されていなかった。
すぐに逃げなければ、二人とも粉々に吹き飛ばされてしまう。
江口侑樹は腰から常に携帯している短刀を取り出し、シートベルトを掴んで手際よく切断し、長い腕で園田円香の肩を抱え、苦労して彼女を引き出した。
車から異常な音が聞こえ始めると、江口侑樹は園田円香を抱き上げ、遠くへ走り出した。
しかし3歩も走らないうちに、巨大な爆発音と炎が背後で轟き、強烈な衝撃波が二人を襲った。
江口侑樹は無意識に腕の中の園田円香を強く抱きしめ、その後、その力に押されて激しく前方へ倒れ込んだ。