第415章 婚約破棄の本当の理由

江口侑樹は少し考え込み、すぐには答えなかった。

園田円香の手は無意識のうちに握りしめられていた。これまでのすべての質問に彼は迷わず答えてきたのに、なぜこの質問になると躊躇するのだろう?

つまり...彼は安藤吉実に対して、やはり感情を持っていたのか?

それは彼女の前のことなのか、それとも...これほど長い年月、彼の心の中にずっと場所を残していたのか?

園田円香の胸の内は酸っぱさが広がり、同時に抑えきれない怒りも湧き上がった。

彼女の感情を察したかのように、江口侑樹は彼女の目を見つめ、軽く口角を上げてから、ゆっくりと答えた。「ない」

ふん。

もしないなら、なぜ躊躇するの?

園田円香は我慢できず、冷笑した。「あるなら認めればいいじゃない、男なら、やったことから逃げるの?」

表に出ている敵は陰に潜む敵よりも対処しやすいなんて言っていたけど、それはただの言い訳だろう。彼は安藤吉実が悪意を持っていることを知りながらも、彼女に惹かれて、愛に目がくらんでいたのかもしれない。

まさに恋愛小説の愛と憎しみ...だからこそ江川おばあさんも必死になって二人を引き離そうとしたのだろう...

園田円香の頭の中で大きなドラマが展開されようとしていた時、江口侑樹は軽く笑い、再び彼女の思考を遮った。

「本当にない」

男性の言葉は非常に真剣だった。「円香、もし私が彼女を好きだったなら、彼女を国外に行かせたりしなかった」

一緒に育った情は、確かに少しはあった。

しかし、その情も、彼女があの人に送られてきたことを知った時点で、すでになくなっていた。

おばあさんが彼女を国外に行かせたのも、彼女が自分の命を救ってくれたことを考慮して、一つの生きる道を与えたようなものだ。

ただ彼女自身が感謝せず、満足することを知らず、今日のこの状況に至ったのは、彼女自身の自業自得だ。

園田円香は彼と十数秒間じっと見つめ合った。彼は目をそらすことなく、落ち着いた穏やかな眼差しで、本当に何も不自然なところは見られなかった。

確かにそうだ。江口侑樹の性格からすれば、もし彼が安藤吉実を好きだったなら、彼女をずっと側に置いておくこともできたし、安藤吉実にあの人を裏切らせて、自分の味方にすることもできただろう。

安藤吉実は彼をあれほど好きなのだから、喜んで従っただろう。