第32章:病院から逃げ出す!

鈴木花和は目の前の澄んだ泉を見つめていた。泉の底には透明で輝く小石が散りばめられていた。

周りには薄い白い霧が漂い、幻想的な雰囲気を醸し出していた。

鈴木花和は呆然としていた。

彼女は茫然と周りを見回し、その目は驚きと戸惑いに満ちていた。

周囲は九つのマスに区切られた土地のようだった。

片側は乾いた土地で、もう片側は水田で、二つの九マス格子が眼鏡のような形を作っていた。

清らかな池は眼鏡の鼻にあたる部分にあり、両側には小川が流れ、二つの九マス田地を一周していた。

各区画は約一反歩の大きさで、つまりここには合計約十八反歩の土地があった。

おそらく開発されていないためか、各区画には雑草が生い茂り、とても乱雑な状態だった。

いや、違う……

鈴木花和は自分の頬を叩いた。パチパチという澄んだ音が響いた。

頬に痛みを感じた。

夢じゃない!

一体これはどういうことなの?

ここはどこ?

どうして突然ここに来てしまったの?

確かにベッドで休んでいたはずなのに?

そうだ、ベッドで休んでいた。

だから、きっと夢を見ているんだ!

夢だと思った鈴木花和は、それ以上気にしなくなった。

三月は雨の日が多く、空気も湿っぽく寒いはずなのに、ここでは心地よい温かさを感じた。

彼女はしゃがみ込んで、泉の水を手ですくって口に運んだ!

「ああ、この水おいしい!甘くて清らか!」鈴木花和の目が輝き、思わず感嘆の声を上げた。そしてまた水をすくって飲んだ。「すごく甘くて清らか。この夢の感覚は現実すぎないかしら」鈴木花和は心の中で疑問に思ったが、深く考えなかった。

彼女は数口泉の水を飲んで満足すると、もう飲むのを止めた。

しばらくすると、体全体が温かくなり、胸の傷跡がかゆくなってきた。思わず傷跡に手を伸ばすと、違和感を覚えた。傷が痛くない。

そうか、今は夢の中だから、傷が痛むはずがない。

そう思って、鈴木花和は気にしないことにした。

しかしすぐに、別の問題に気づいた。見える肌の表面に、黒い何かが突然現れたのだ。

手で触ってみると、なんと汚泥の層だった。

そして袖とズボンをまくり上げてみると、そこにも汚泥が出てきていて、すぐに嗅ぐと強い酸っぱい臭いがした。