第31章:空間の出現

鈴木花和は怪我がそれほど深刻だとは思わなかったが、折田辻司は彼女を抱きかかえたまま、サンリー病院まで走っていった。

「折田坊ちゃま、私は大丈夫です。どうか私を下ろしてください!」鈴木花和は強く抗議した。

道中ずっと、まるで猿のように、人々に驚きの目で見られ続けた。

多くの人々は、鈴木花和が名高い折田坊ちゃまに直々に病院まで抱きかかえられるなんて、この上ない栄誉だと思い、その目には露骨な羨望と嫉妬の色が浮かんでいた。

鈴木花和はそれを栄誉だとは思わず、むしろ大きな厄介事になりそうだと感じていた。

だから、早くこの厄介事から逃れたほうがいいと思っていた。

彼女のような一般市民には、折田辻司のような高貴な坊ちゃまには関わり合いになれないのだ。

折田辻司は鈴木花和の抗議を完全に無視し、彼女を抱きかかえたままサンリー病院の最高級病室へと向かった。