松本お婆さんが野菜の入った籠を持って帰ってくると、お爺さんは厳しい表情で言いました。「おまえ、どうしてそんなにたくさんの野菜をもらってきたんだ?あの子から安い家賃をもらっているのは、野菜を貪るためじゃないぞ!」
松本お婆さんは困った顔をして言いました。「私だってこんなにたくさんもらうつもりじゃなかったのよ。お金を払おうとしたのに、あの子のお母さんが受け取らないで、これだけの野菜をくれたのよ」
お爺さんはそれを聞くと、目を細めて言いました。「まあ、いいだろう。あの人たちの好意なんだから」そう言うと、また大きな文字を書き続けました。
松本お婆さんが昼ご飯を作っているとき、白菜を鍋に入れると、その香りが部屋中に漂いました。
松本お爺さんは鼻をひくつかせ、匂いを嗅ぎながら、すぐに大声で尋ねました。「おい婆さん、何を作っているんだ?なんてこんなに良い香りがするんだ?」
松本お婆さんは野菜を炒めていて、鍋から「シュッシュッ」という音が鳴り響き、お爺さんの声が聞こえませんでした。
この香りを嗅ぐと、たちまちお腹が空いてきて、筆を投げ出して書くのをやめ、台所に走って行き、婆さんが何を炒めているのか見に行きました。
しかし台所に入ってみると、鍋で炒めている料理以外に、できあがった料理は何もありませんでした。
松本お爺さんは鍋の中の白菜を見て尋ねました。「おい婆さん、このいい香りは、この白菜だけのものなのか?」
松本お婆さんは彼を横目で見て、不機嫌そうに言いました。「そうよ。他に香りの出る料理があるっていうの?」
心の中では密かに得意げでした。「この爺さんに文句を言わせておいて、ほら、こんなに良い香りがするでしょう」
松本お爺さんは鍋の中の白菜を見つめ、そして横に置かれた切った野菜を見て、何か考え込んでいるようでした。
この日、松本お婆さんの家族七、八人が昼食を食べる時、皆が料理を取り合うほど夢中で、年長者を敬う美徳も忘れてしまうほどでした。
中年の女性は食べながら尋ねました。「お母さん、この野菜どこで買ったの?どうしてこんなに美味しいの?これからも毎日買えないの?」
松本お婆さんは彼女を横目で見て言いました。「これは買ったんじゃないのよ、人からもらったの。それに、こんな野菜が毎日あると思っているの?甘い考えね」