木野お婆さんは買い物を済ませると、そのまま帰っていった。
道中、団地の顔見知りのお年寄りたちと出会い、互いに挨拶を交わした。
彼女がこんな早くに買い物から戻ってくるのを見て、不思議そうに尋ねた。「あれ、木野さん、買い物が早いですね?たった今出かけたばかりじゃないですか?」
木野お婆さんは笑いながら答えた。「団地を出たところで、三輪車で野菜を売っている若い娘を見かけたので、少し買って帰ってきたのよ。」
草刈お婆さんはエコバッグの中の野菜を覗き込んで、笑顔で言った。「この野菜、とても新鮮ね。一斤いくらだったの?」
木野お婆さんは淡々と答えた。「白菜が一個15元、なすびが一本2元、ほうれん草が一斤15元、それにこの唐辛子が一斤20元よ。」
「なんですって?そんなに高いの!」周りのお年寄りたちはその高額な野菜の値段を聞いて、とても驚いた。
草刈お婆さんはすぐに言った。「木野さん、騙されたんじゃないですか?こんなに高い野菜なんてありませんよ。市場ではなすびは一斤0.6~0.7元、白菜は一斤0.3~0.4元、ほうれん草も一斤2元、唐辛子は少し高くても一斤3元ですよ。」
そう言うと、草刈お婆さんは怒りを露わにして大声で言った。「よし、どんな詐欺師がこんな大胆なことをしているのか見てやろう。」そう言って、木野お婆さんの手を引いて外に向かおうとした。「行きましょう、木野さん。警察に突き出して、しっかり懲らしめてやりましょう。」
木野お婆さんも怒り出し、草刈お婆さんを見つめて言った。「草刈さん、あなたの気持ちはわかります。でも、その人が詐欺師かどうかは、私たちは警察じゃないから判断できません。でも私は騙されてなんかいません。私は自分の意思でこの野菜を買ったんです。値段も明確に表示されていて、お互いの合意の上での取引なのに、どうして相手を詐欺師と決めつけられるんですか?」
そう言って、草刈お婆さんの手を振り払い、さらに言い足した。「草刈さん、私の台所ではスープを煮ているので、先に戻らせていただきます。」
実は、あの娘の言う通りだった。
物には相応の価値がある。彼女はその生の白菜を味わってみて、その汁の甘みが格別だと感じていた。
実際、木野お婆さんも頑固な性格だった。
彼女は自分が騙された馬鹿だとは認めたくなかった。