松本お婆さんと木野お婆さんは買い物を済ませると、そのまま帰っていった。
鈴木花和は三輪車に乗り、上機嫌で出発した。
路地を出て、上り坂に差し掛かったところで、「あっ、お姉ちゃん!ママ、お姉ちゃんが来たよ!」という声が聞こえた。
鈴木花和が声のする方を見ると、以前トマトを最初に買った少年と、その母親が坂の近くに立っているのが見えた。
「あら、坊や、久しぶりね!」鈴木花和は笑顔で挨拶した。「今日は早く学校に行くの?」
まだ6時過ぎだろう。
幼稚園がこんなに早く開くのだろうか?
木野俊信は首を振って言った。「お姉ちゃん、学校じゃないよ。僕とママは、お姉ちゃんを待ってたんだよ!ね、ママ!」
木野俊信の後ろにいた伊東明美は少し照れくさそうに笑って言った。「この子ったら、お姉さんのお野菜を食べてから、毎日買いたい食べたいって言ってるんです。でも、この何日か見かけなくて。遅く来たらもう売り切れちゃってるんじゃないかって思って、この二日間は早起きして、ここで待ち伏せしてたんです。今日やっと会えました。」