松本お婆さんと木野お婆さんは買い物を済ませると、そのまま帰っていった。
鈴木花和は三輪車に乗り、上機嫌で出発した。
路地を出て、上り坂に差し掛かったところで、「あっ、お姉ちゃん!ママ、お姉ちゃんが来たよ!」という声が聞こえた。
鈴木花和が声のする方を見ると、以前トマトを最初に買った少年と、その母親が坂の近くに立っているのが見えた。
「あら、坊や、久しぶりね!」鈴木花和は笑顔で挨拶した。「今日は早く学校に行くの?」
まだ6時過ぎだろう。
幼稚園がこんなに早く開くのだろうか?
木野俊信は首を振って言った。「お姉ちゃん、学校じゃないよ。僕とママは、お姉ちゃんを待ってたんだよ!ね、ママ!」
木野俊信の後ろにいた伊東明美は少し照れくさそうに笑って言った。「この子ったら、お姉さんのお野菜を食べてから、毎日買いたい食べたいって言ってるんです。でも、この何日か見かけなくて。遅く来たらもう売り切れちゃってるんじゃないかって思って、この二日間は早起きして、ここで待ち伏せしてたんです。今日やっと会えました。」
鈴木花和は少し驚いた様子で、トマトを二つ取り出して渡しながら言った。「はい、このトマト二つ、お姉ちゃんからのプレゼントよ!」
木野俊信はトマトを受け取り、元気よく「ありがとう、お姉ちゃん!」と言うと、トマトを拭きもせずに一口かじった。伊東明美もそれを見ていたが、止めようとはしなかった。
彼女は三輪車の野菜を見て言った。「今日は前回より種類が多いみたいですね。」前回は野菜を少なめに買ってしまい、何度も後悔したのだった。
前回の二の舞を踏まないよう、今日はたくさん買うことにした。
各種野菜の値段を聞いた後、伊東明美はそれぞれの野菜を少しずつ買った。
家族は三人だけで、子供は魚や肉が好きだが、それ以外は特に好き嫌いはない。
鈴木花和は彼女がたくさんの野菜を選んでいるのを見て言った。「この三、四日は私がこの町で野菜を売りますから、もしお近くでしたら、直接私の家に来て買うこともできますよ。私の家はここから入って、左に曲がって右に曲がって、もう少し進むと赤い鉄の門がある家です。今私が野菜を売っている場所です。」
鈴木花和の話を聞いて、伊東明美は少し考えてから尋ねた。「家には他の人もいるんですか?何時頃行けばいいですか?」