第111章:常連客1(その1)
翌日、早朝から松本お婆さんと松本お爺さんが鈴木花和の住まいを訪れた。花和が野菜を売りに出かけてしまい、彼らの分の野菜を取り置き忘れることを心配してのことだった。
「鈴木ちゃん!」松本お婆さんが外から戸を叩いた。
夜明けがようやく始まったばかりで、花和は運び出す野菜の確認をしているところだった。しばらくすると、松本お婆さんの声が聞こえてきた。
花和は時計を見た。まだ6時前だった。
松本お婆さんと松本お爺さんがこんなに早く来るとは意外だった。
花和は戸口に向かい、開けて尋ねた。「おはようございます、松本お婆さん、お爺さん!どうしてこんなに早くいらっしゃったんですか?」
松本お婆さんは言った。「遅く来たら、あなたがもう出かけてしまうでしょう!」あなたが出かけてしまったら、私たちは野菜を手に入れられなくなってしまうわ。
松本お爺さんはより率直で、冗談半分まじめ半分に笑いながら言った。「お嬢さん、あなたの野菜は本当に美味しいよ。あなたの野菜を食べてから、ずっと忘れられなくてね。だから、野菜を取り置き忘れられる前に、先に来て確保しようと思ってね!」
花和は微笑んで言った。「松本お爺さん、誰の分の野菜を忘れても、お二人の分は絶対に取り置きますよ!外は寒いですから、どうぞお入りください!」
松本お婆さんと松本お爺さんが花和の庭に入ると、三輪車に新鮮な野菜が満載されているのが目に入った。
松本お婆さんは野菜の種類が増えていることに気付いた。
前回来た時は、トマト、白菜、ほうれん草、なすび、唐辛子だけだったことを覚えていた。
今回は新たにきゅうり、油菜、にんにくの芽、ニラが加わっていた。
「今回は種類が増えているわね!」松本お婆さんは笑顔で尋ねた。
「はい、そうです、松本お婆さん!」
「じゃあ、それぞれの野菜を少しずつ頂戴ね!」松本お婆さんは笑って言った。
「お前さん、たくさん買っておくれよ!」松本お爺さんが突然声を上げて注意を促した。
前回、花和が用意した野菜は2日分のはずだったが、家族が多く、子供たちが食べたがったため、2食で全部なくなってしまった。
それ以来、花和が再び野菜を売りに来るのを待っていたが、10日以上待っても現れなかった。