第163章：離間を煽る（2更）

「黒田さん、大変です！あの...あの...」黒田ホテルのキッチンで、ウェイターの一人が大げさに走ってきて叫んだ。「向かいのイケアホテルの和田輝昭が私たちのホテルに食事に来ました。」

黒田さんは鉄のお玉を持って、鍋の中をかき混ぜ、白菜の炒め物を取り出した。

ウェイターの大げさな様子を見て、淡々とした表情で言った。「来たなら来たでいいじゃないか。大げさに騒ぐことはない。初めて来たわけでもないのに。」

前回変装して来た時、気づかなかったと思っているのだろうか？

つばの低い帽子をかぶり、サングラスをかけ、まるで芸能人のような格好をしていた。

しかし、黒田陽次と黒田疾風の叔父と甥は、ライバルのことをよく知っていて、灰になっても見分けがつくと言っても過言ではない。

黒田疾風は特に彼の食事する席に行って言った。「和田社長、ようこそいらっしゃいました。事前に連絡いただければ、和弘に個室を用意させたのに。イケアホテルの方が黒田ホテルに食事に来るなんて、知らない人は、イケアホテルの料理がひどく不味いのかと思うでしょうね。」

黒田疾風は以前の憔悴した様子から一変して、意気揚々としていた。

特にライバルが変装してここで食事をしているのを見て、気分は一層爽快になった。

この機会に和田輝昭をからかわないでいつ待つのか？

周りの客たちは、向かいのイケアホテルの社長がライバル店で食事をしていると聞いて、皆大きな目を見開き、好奇心いっぱいの表情で和田輝昭を見つめ、中には異様な光を目に宿す者もいた。

この和田輝昭は本当に食事をしに来たのか、それともライバル店の様子を探りに来たのか？

どちらにしても、ライバルに見つかるのは非常に恥ずかしいことだ。

和田輝昭は厚かましく、軽蔑したように一言言った。「ここの料理はこんなものだな。」

そして立ち上がってそそくさと立ち去ったが、まるで逃げ出すような様子だった。

今回また和田輝昭が食事に来たと聞いても、黒田疾風にはもう彼をからかう気も起きなかった。

ウェイターが言った。「この和田輝昭は誰かと食事の約束をしているようです。それも以前来たことのある黒田社長のお友達のようです。」

和弘の友達と聞いて、黒田疾風は不思議そうに尋ねた。「和弘の友達？どの友達だ？」