第268章:母娘と娘の自滅 (その1)

「聞いたの?山本春香の長女の鈴木花子が川に飛び込んだそうよ!」

「えっ、川に?死んだの?」

「いいえ、助けられたわ」

「何で急に川に飛び込もうとしたの?」と誰かが不思議そうに尋ねた。

「急にって...ふふ。中尾家が彼女の母親のやったことが恥ずかしいって言って、彼女を殴って実家に追い返そうとしたのよ」

「実家に追い返すって、昔なら離縁するってことでしょう。つまり中尾家は花子と離婚する気なのね」

「離婚か!それも恥ずかしいことよね。花子が自暴自棄になって川に飛び込もうとしたのも無理はないわ」

「はぁ、この山本春香は何て因果を作ってるんでしょうね?平穏な生活を送ればいいのに、いつも問題を起こして、自分の娘まで悪い方向に導いて」

花子は嫁いで一年で男の子を産み、大功を立てたと思い込んで、家で威張り散らして、仕事もせず、毎日誰かとおしゃべりばかり。十郷村にも何人か怠け者がいて、毎日仕事もせず村はずれの大きな木の下でトランプなんかをしていた。

そのうちに、花子はその中の一人と関係を持つようになった。

「まったく、母親がこうだから娘もこうなるって言うのも分かるわ。花子は結婚する前はこんなじゃなかったのに、どうして結婚してからこんなに素行が悪くなったのかしら?」

「結婚前は、村の人たちのことはみんな知り尽くしていたし、みんな貧しかったから、誘惑する相手もいなかったのよ。

でも十郷村は違うわ。聞くところによると、あの家は裕福で、夫は一人息子で、姑と舅も若くて働き者。作物を売ったお金は全部若い二人のものになるの。家族全員が働き手で、食べ物も着る物も困らない。子供の面倒だけ見ていれば良いから、心が落ち着かなくなったんでしょうね」

「まったく、自分で自分の首を絞めているわね。母親も娘も自滅して。母娘で何か大それたことでもしようってのかしら?」

「ふふ」誰かが口を押さえて笑いながら言った。「何をするって、男を誘惑することでしょ!」

「ふふふ...」

みんなが少し笑った後、また誰かが不思議そうに尋ねた。「それで、今花子はどうなったの?」

「どうもこうもないわ。死ななかったから、十郷村から送り返されてきただけよ」

「あぁ、送り返されたの。じゃあ中尾家は本当に花子と離婚する気なのね?本当に離婚したら、子供はどうなるの?継母がいれば継父もいるって言うでしょう」