床に落ちた写真は、全部で二枚。
河野お爺さんが写真を投げ出した時、床に落ちた後、一枚は裏返り、もう一枚は表向きになった。
表向きになった写真はちょうど宮崎高空と鈴木花和のものだった。
秦野朱音がこの写真を見た時、血の気が引き、真っ青になり、まるで千年の氷窟に落ちたかのように全身が冷え切り、凍えて体が紫色になり、しばらくすると全身が硬直し、もう立っていられなくなり、よろめいた。
写...写真...
どうして?
秦野朱音はこの時、頭が全く働かず、真っ白になっていた。
確かに河野並木とある女性の写真のはずなのに、どうして宮崎高空とこの女性の写真に変わっているの?
違う、この写真の元々の主役は宮崎高空で、彼女が誰かに頼んで河野並木に変えさせただけで、何も変わっていないのだ。
なぜなら、彼女は河野お爺さんのような全てを掌握し独断専行する人物に対して、彼女のような若輩者が彼の前で策略を弄するなんて絶対にしないと確信していたからだ。