021:信念

言葉が落ちた。

若松峰也は少し不安そうに如月廷真を見た。

彼の表情には特別な色は見られず、薄い唇を固く結び、淡々と「うん」と答えただけで、感情は読み取れなかった。

若松峰也は唇を舐めながら、続けて言った。「父は別にお前を狙っているわけじゃない。俺に対しても同じだよ。たぶん父の心の中では若松岳登だけが実の息子なんだろう!俺が何をしても、勉強もしないダメ人間だと思っているし、いつも否定ばかりだ。」

彼がeスポーツを好きになると、若松満志の目にはネットゲームに溺れているようにしか映らなかった。

独立して起業したいと思い、父からの励ましを期待したが、若松満志は彼が分不相応な夢を見ていると思った。

如月廷真と親友になると、若松満志は堕落して向上心がないと思った。

若松満志は彼をまともに見たことがないようだった。

ここまで話して、彼は自嘲的に笑った。「でも、どうでもいいさ。父がどう思おうと関係ない!」

実は若松峰也は時々如月廷真を羨ましく思っていた。如月廷真は悪名高く、河内市では誰もが避けて通る存在だったが、両親の愛情を独り占めにしていた。

如月廷真は目を伏せ、人差し指の銀の指輪を回した。

古い指輪は陽の光を受けて、神秘的な輝きを放った。

「ある言葉を聞いたことがあるか?」

「どんな言葉?」若松峰也は尋ねた。

如月廷真は続けた。「龍として生まれた者は、たとえ牙が折れ、鱗が剥がれ、目が見えなくなり、爪が折れ、浅瀬に落ちても、龍は龍のままだ。」

彼は一字一句、低い声で、大きくはないが、一つ一つの言葉が耳に響いた。

若松峰也はそのまま如月廷真を見つめ、しばらく反応できなかった。

この感覚は少し奇妙だった。

まるで突然信念を得たかのように、胸の中に力が満ちていた。

「三哥。」

「ん?」

「俺はお前を信じてる!」

如月廷真は軽く笑った。「でも俺は自分のことすら信じていないんだけどな。」

木漏れ日が彼の体に差し、まるで非現実的な存在のように見えた。

しばらくして、如月廷真はゆっくりと振り返り、相変わらず淡々とした表情で言った。「この世界で、お前が唯一信じるべき人間は、お前自身だけだ。決して希望を他人に託すな。」

......

蒼井真緒は周防蕾香に付き添われてお茶会に来た。