その細い姿を見つめながら、如月廷真の瞳の色は深くなっていき、人差し指を曲げて、テーブルの上を軽くたたいていた。
しばらくして、彼は視線を戻し、隣の若松峰也を見た。
「指輪は?」
「どの指輪ですか?」若松峰也は一瞬戸惑った。
「婚約指輪だ」
如月大爺様は確かに婚約指輪を用意していたが、如月廷真は婚約を解消すると言ったのではなかったか?
「三兄さん、婚約を解消しないんですか?」若松峰也は尋ねた。
「何の婚約解消だ?」如月廷真は問い返した。
「さっき休憩室で、あなた自身が言ったじゃないですか!そんなに早く忘れたんですか?」
「聞き間違いだ」如月廷真は淡々とした口調で、まるで婚約解消の話など一度も言っていないかのように答えた。
言い終わると、如月廷真は若松峰也に手を差し出した。「指輪を」