062:決して凡人ではない

蒼井真緒は今、とても悔しい思いをしている。

結城詩瑶の最初の診察をしたのは彼女だった。

三日おきに結城詩瑶の薬を取り替えに行ったのも彼女だった。

結城詩瑶を治したのは明らかに彼女なのに。

今はどうだ?

功績は全て蒼井華和に横取りされてしまった。

蒼井真緒には理解できなかった。なぜ人はここまで厚かましくなれるのか。

蒼井龍と周防蕾香の言う通り、蒼井華和は恩知らずな白眼狼で、どれだけ優しくしても妹として認めてくれない。

蒼井華和は彼女のものを奪うだけだ。

この言葉を聞いて、他の人々の表情が変わった。

なんと、蒼井真緒も結城詩瑶の治療をしていたのだ。

一方は田舎から来た村娘、もう一方は河内市で名を馳せた才女。

結城詩瑶を治したのが誰なのか、結果は明らかだった。

人々が疑問を抱いている時、結城大婆様が続けて話し始めた。「蒼井さん、お忘れですか?あなたの治療の下で、詩瑶の容態は日に日に悪化し、ベッドから起き上がることもできなくなりました。もし蒼井お嬢様が適切な時期に手を差し伸べてくださらなかったら、私はもう詩瑶に会えなかったかもしれません。あなたは蒼井お嬢様に感謝すべきです。」