「いいえ、いいえ」篠崎登世は首を振って言った。「彼女の最高の状態をまだ見ていないのよ」
その言葉を聞いて、林朝日は非常に驚いた。「これでもまだ最高の状態じゃないんですか?」
篠崎登世は笑って言った。「そうよ」
林朝日は唇を舐めた。蒼井真緒が最高の状態になったら、どんな様子になるのか想像もできなかった。
一曲が終わった。
蒼井真緒はバイオリンを片付け、審査員の採点を待った。
最初の審査員が9.5点という高得点をつけた。
次は8.9点。
8.5、9.3、8......
最高点と最低点を除いて、蒼井真緒の最終得点は65点となった。
司会者は計算された点数を見て興奮した様子で「インターナショナルスクールの蒼井真緒さん、現在の最高得点、平均点8.125点を獲得されました!おめでとうございます!」
その言葉が終わると、会場から耳をつんざくような拍手が沸き起こった。
パチパチパチ——
「ありがとうございます」
蒼井真緒はお辞儀をして、口元の笑みを隠した。
司会者はそれを見て、興味深そうに尋ねた。「こんな高得点を取られたのに、蒼井さんはあまり嬉しそうではないようですが?」
蒼井真緒は司会者を見上げ、続けて言った。「私の演奏は想像していたほど良くなかったと感じています。次回はもっと努力して、皆様により良い自分をお見せできるよう頑張ります」
この言葉に、会場からざわめきが起こった。
蒼井真緒はこんな高得点を取ったのに、まだ自分の演奏が良くなかったと言うのだ。
河内市第二の才女と称される白川芙蓉でさえ50点台だったというのに。
蒼井真緒は彼女より10点以上も多かったのだ!
「蒼井さん、本当にすごいですね!」
「さすが河内市第一の才女!」
「実力があるだけでなく、謙虚でもある。この第一位は蒼井さんの手中にあるわね」
「まだ最後の出場者が残っているわよ!第一位かどうかは、コンクールが終わってからでしょう」
この言葉が出ると、すぐに空気の中に嘲笑が漂った。
「最後の出場者が誰か知ってる?」
「蒼井華和よ!そう、蒼井家の養女」
「ああ、あの子か......
この言葉を聞いて、皆すぐに期待を失った。
田舎者の娘が、バイオリンが弾けるかどうかも分からないのに、仮に弾けたとしても、どれほどの実力があるというのか?